舘野佳嗣 (プロデューサー)

2013年5月、春秋座の芸術監督は三代目市川猿之助(現・猿翁)から四代目猿之助に引き継がれ、新たな幕開け迎えた。その後、芸術監督プログラムと称し、舞踊公演や異分野で活躍する古典芸能のエキスパートたちがコラボした「伝統芸能の今」の上演、大歌舞伎では義経千本桜で何年かぶりに宙乗りが再現されるなど、春秋座は近年にない活気を取り戻した。社会普及系では、猿之助芸術監督公演を柱に、宝塚OGスター涼風真世に安蘭けいらが地元京都フィルハーモニー室内合奏団と共演したコンサートや、加藤登紀子がエディット・ピアフの生涯をモノオペラで綴った特別公演に学生らが出演し大いに成果を上げた。それに松平健主演の不朽のミュージカル「王様と私」や、桂米團治が上方落語とオペラを融合させ春秋座ならではの歌舞伎機構を駆使して上演した「おぺらくご」に、漫画の神様手塚治虫原作「アドルフに告ぐ」が圧倒的な作品力で絶大なる感動を呼んだ。また、本学出身者を有し、坂東玉三郎芸術監督によりさらなる進化を遂げた和太鼓集団「鼓童」など様々なバラエティーに富んだ公演をおおくりしている。ある時は学生を巻き込んで一流のアーティストを身近に感じてもらい、遠方からも足を運んでくれるような独自の公演も手がけ、近隣の人たちにはわざわざ遠くまで行かなくても春秋座で良質の舞台を観ていただくよう、地域貢献にも力を入れている。今後も社会普及系は常にお客さま、客席目線で舞台制作に臨んでいきたい。