田口章子 (創造学習センター教授、歌舞伎研究)

 春秋座を企画するときの重要なキーワードは「日本を知る」。グローバル化時代をむかえ、世界に占める自分の国の独自の価値観を見出すことが大切であるという趣旨である。方法は、伝統芸能をツールとして講演と公演の組み合わせ上演という形で行う。私が基本とする見せ方のスタイルである。
 もっとも大事にしているのが「テーマ」の設定。伝統芸能の数は決まっている。「テーマ」次第で新たな視点を提供してくれるからである。「テーマ」選びの大前提は学術的な理論を背景に持っているということ。最新の研究成果をもって発信するのは、学びが、今、生きるためにいかされなくては意味がないからである。「テーマ」を最大限に追及してくれる専門家に依頼することはいうまでもない。
 「芸能と芸道は日本を知る鑑である」をキャッチフレ-ズに展開している「日本芸能史」は15周年を迎える。日本文化の本質に迫る充実の内容である。乞うご期待。