橘市郎 (春秋座顧問プロデューサー)

 16年前、3代目市川猿之助(現2代目市川猿翁)先生から「京都のある大学内に、歌舞伎とオペラが理想的に上演できる劇場が建つんですが行ってくれませんか?」とお声掛けいただいた時、私はとても信じられませんでした。「大学の中に本格的な劇場?」というのが正直な気持ちだったのです。それが、奇跡的に実現したのは、芸術を愛してやまない大学の創設者徳山詳直先生と3代目猿之助先生という、カリスマ的なお二人の出会いがあったからこそだと思っています。お二人の情熱が誕生させた春秋座。私は乳母の気持で、落とし子をお世話してまいりました。それから15年、春秋座は義務教育期間を終え、これからは青年としてたくましく歩んで行くことになります。私はそんな春秋座をいつまでも目を細めながら見守ってまいります。春秋座は大学にとっても、京都にとっても誇るべき貴重な文化遺産なのですから。