experiment
京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター上演実験シリーズvol.14
極彩色の伝統 〜 聲明と雅楽でおりなす舞楽法会
(ごくさいしきのでんとう〜しょうみょうとががくでおりなすぶがくほうえ)
構成・演出 木戸敏郎
出演 聲明=天台宗総本山比叡山延暦寺 法儀音律研究部(ほうぎおんりつけんきゅうぶ)
雅楽=天王寺楽所雅亮会(てんのうじがくそがりょうかい)
曲目:聲明 入堂讃(四智梵語讃(シチボンゴノサン)
四箇法会(シカホウエ) 唄(バイ)、散華(サンゲ)、対揚(タイヨウ)、梵音(ボンノン)、錫杖(シャクジョウ)
表白(ヒョウビャク)
諸天漢語讃(ショテンカンゴノサン)
雅楽
振鉾(エンブ) 一節、二節、三節
番舞(ツガイマイ) 左舞/萬歳楽、春庭楽、桃李花
右舞/延喜楽、白浜、登殿楽、他
【舞楽法会(ブガクホウエ)
 舞楽法会は聲明(ショウミョウ)による法会を舞楽で装飾する、平家納経にも似た美しいステージです。
聲明は仏典を朗唱するヴォーカルです。古代インドの音声学「シャブダ(声)−ヴィッヅヤ(学問)」が仏典の朗唱に応用され、仏教と共に中国へ伝わると「聲明」と漢訳されて日本にも伝来して今に伝承されているもの。声という人間の身体の在り方に準拠した有機的な歌唱です。
 舞楽は雅楽による舞です。雅楽の楽器は正倉院楽器の廃絶をまぬがれたものの子孫であり、正倉院楽器は古代シルクロードの楽器そのもの。従って雅楽の楽器は古代シルクロードの楽器の子孫であって、楽器の原種とでもいうべきもの。洋楽の楽器とは違って、楽器という道具の音の在り方に準拠したトータルな音の情報量が特色です。
 このように舞楽法会は、古代インドの声の伝統と古代シルクロードの楽器の伝統とを集成した極彩色の伝統です。

 また、舞楽法会は京都の都市構造とも共通する理念で構造化された、形而上学的なパフォーマンスです。
京都の左京と右京は地図でみると左右が逆ですが、実は内裏(御所)からみて左が左京、右が右京。舞楽の左方(サホウ)・右方(ウホウ)の管方(カンガタ/演奏家)も天子の視点からみての左・右です。その中間部分の正方形の舞台は、古代東アジア天文訓(天文学)の『天円地方(天は円形で地は方形)』という形而上学を形象化したもので、宇宙構造の模型です。
 この一つの舞台を二つのグループが交互に使用することで、空間の中に形而上学的な時間が現れます。南面する天子からみて左方は東、右方は西。この位置関係は太陽の運行を想定すると、まず左方が先行し、その後で右方、これを昼夜の交替とみなして一セットを番舞(ツガイマイ)といい、番舞を重ねることで永遠の時間を表します。
 左方と右方の二項対立は、奇しくもコンピューター情報処理システムのビットの思考と同じです。そこで舞楽の構造をビットに重ねて解釈しなおすと、古典はたちまち創造する伝統に変換されて創作の源泉になります。今回、そのメカニズムの一端をご紹介します。
木戸敏郎

【プロフィール】
構成・演出/木戸敏郎
演出家。元国立劇場演出室長。仏典を朗唱する日本音楽の古典を新しい音楽理論で読み替え、現代音楽の文脈に組み込んでゆく音楽運動(聲明)を国立劇場開設(ユ66年)以来継続。また雅楽の楽器やその原点の正倉院楽器等を復元した始原楽器による音楽創造運動(伶楽)を展開。これらを国内外で発表して高い評価を受ける。中島健蔵音楽賞、クラウス・ヴァックスマン賞(アメリカ)受賞。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科教授。

聲明/天台宗総本山比叡山延暦寺 法儀音律研究部
 '51年住職の研究機関である延暦寺学問所の一つとして組織。前身はユ48年に設置された「音律研究所」。その精神を継承しながら、中山玄雄師(故人)や誉田玄昭師(故人)、そして現在、天台聲明の第一人者である即真尊 師を中心に約20名の部員が、天台宗の法要儀式や天台聲明の伝承と研究、時代に即した法要儀式(洋楽譜による)の在り方について研究を重ねている。国内外での聲明公演も多数。

雅楽/天王寺楽所雅亮会
 雅楽は奈良時代に四天王寺に伝来、平安時代における日本雅楽の成立以来、主に宮廷(京都)、南都(奈良)、四天王寺(大阪)の雅楽団体=楽所(がくそ)により伝承。1868 年東京遷都により天王寺楽所は解体の危機に陥るが、大阪の仏教僧、小野樟蔭が残留の天王寺楽人や民間の篤志家を集めて再興、これが雅亮会の始まりとなる。1884年(明治17年)設立。現在メンバーは140余名。四天王寺、住吉大社、厳島神社及びその他の社寺における宗教儀式を活動の中心に、66年より大ホールでの演奏会、74年からは雅楽ゼミナールを開催。1976年国の重要無形民俗文化財指定。海外公演も多数。

装束甲デザイン/清水九兵衛
彫刻家。野外彫刻にウエイトをおく旺盛な制作で知られ受賞多数。併行して七代清水六兵衛の名で陶芸展も数多く開催してきた。舞楽のための装束甲デザインは国立劇場の委嘱に応じて五回制作していて、今回使用するものはユ81年石井真木作曲『飛天楽』のために制作され、その後も主としてヨーロッパ公演でたびたび使用されている作品である。京都造形芸術大学教授。
日時 2004年5月29日(土) 15:00開演(14:30開場)
会場 京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
料金
[一般] 前売 3,000円 当日 3,500円
[学生・25歳以下] 前売 2,000円 当日 2,500円
(学生証か年齢のわかるものを提示)
※全自由席
※未就学児童のご入場はお断りします。
前売開始日 4月1日(木)
前売取扱 舞台芸術研究センター 075-791-8240
チケットぴあ 0570-02-9999
チケットぴあ 0570-02-9966(Pコード168-669)
主催 京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター
[お問い合わせ]
京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター 〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2−116
Tel.075-791-8240 Fax.075-791-9438 E-mail info@k-pac.org
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