昨年の出演者・東尾咲さんが聞く「演じる高校生」インタビュー 昨年、「演じる高校生」に出演した東尾咲さん(大谷高校大阪OG)が、今年の演じる高校生たちを訪ねました。 1回目 法隆寺国際高等学校演劇部 編

インタビューに集まってくれた演劇部メンバー。右下より逆時計周りに部長の山下友里亜さん(2年)大谷津義枝さん(2年)長瀬香奈子さん(2年)秀平智美さん(2年)井上好史くん(2年)萩成美さん(1年)杉本百合子さん(1年)中矢圭輔くん(3年)森行省太くん(3年)大西貴也くん(2年)藤本侑花さん(1年)

「演じる高校生」とは

毎年、11月に開催される高校演劇コンクール近畿大会の優秀高2校による春秋座招待公演です。高校生が捉える現代を、瑞々しい感性と斬新な切り口で、「演劇」という総合芸術を通じて表現していきます。

奈良県立法隆寺国際高等学校 「森のひと」 作・原田 裕(顧問)
オランウータンを介して「自然と人間との共存」、「文明発展の脅威」を描く近未来ファンタジー。タイムリー且つ重くなりがちなテーマを、独特のユーモアや柔らかさで作品の世界観をお届けします。
1年生=青2年生=緑3年生=赤で分けています。
東尾
まずは「森のひと」について伺いたいのですが、ここを見てほしい、というアピールポイントってありますか?
大谷
アピールポイントってどこだろう。Q/P(相対性理論の曲名)?
山下
Q/P?
大谷
ダンスかな
東尾
ダンス?
山下
この話は3話構成なんですけれども、1話から2話に移る時に相対性理論の曲に合わせて、白い椅子のような箱のような物を持って踊る…踊る?
大谷
あれはもう、ゆるく…うわ~って
一同
うわ~、うわ~って!―
山下
って踊るがあるのですが、そこは見てほしいところですね。
大谷
ですね。
東尾
これは、みなさんで振付をして?
山下
踊るのは3人だけなんですけれども、みんなで見ながら、あーだこーだ意見を言って良いものを。でも、最終的には楽しければいいやって。
― アハハハハ―
東尾
みなさんに楽しんでいただけたらと。
山下
はい。
東尾
おすすめポイント、他にありますか?
大西
僕は3場の時にずっと舞台の後ろの方でストップモーションをしているんですよ。
東尾
おっ、ストップモーション!
大西
細かいところですけれど、そこは見てほしいですね。
東尾
ストップモーションの練習は、お一人でしていらっしゃるんですか?
大西
はい。一人で悲しく滴る汗と闘っています。
東尾
目に沁みる感じですね。
普段の稽古でもストップモーションの稽古なんか取り入れていらっしゃるんですか?
山下
そうですね。基礎練習の時に入れたりするんですけれども、
東尾
へー。
山下
なにせ公演数が多いんです。うちの学校って。
なので公演の稽古に時間が取られて、基礎練習が出来ない時がたまにあるのですけれど、やる時はストップモーションの練習をしたりとか、体力を付けたりとかしてます。
東尾
作品を作る上で、大変だったとことか、
苦労したことってあります?
山下
なんでしょうねえ…大西くんはストップモーションで大変だったしねえ。
大西
その直前に暴れ回るし、うーん体力関係ですかねえ。
山下
あ、でも台本の内容理解というか、
東尾
あぁ。
山下
顧問が作ってくださった作品なんですけれども、比喩的な表現や難しい言葉があったりするので、全員で「あ、ここはこういうことなんやねんな。じゃあ、こういう表現にした方がいいのかな」って理解する作業ですね。
東尾
みなさんで読み解いていったっていう感じですか?
山下
そうですね。顧問に教えていただきながら、自分らで。
東尾
演出は?
山下
顧問の先生が。後はみんなで見ながらって感じです。
東尾
こちらは顧問の先生を交えて、みんなで作っているっていう感じですね。
山下
そうですね、はい。
東尾
なるほど。
山下
顧問、様々です。
東尾
素晴らしい先生ですもんね。私もお世話になりました。
みなさん、演劇を始めたきっかけというのは?
大谷
私は「いいかな」と思って。
東尾
じゃあ演劇は高校で入部して初めて? でも入部しようかなって思ったきっかけってあります?
大谷
えっと「いっかなー」って思って。
―笑―
東尾
なんか惹かれてしまったと。
大谷
はい。
長瀬
私も演劇は高校に入って初めてなんですが、部活見学に来た時に、すごく先輩らが楽しそうにしていたんです。
東尾
なるほどー。
長瀬
それで、もう1つの部活と迷っていたんですけれど、「あっ!こっち行った方が絶対楽しいな」って演劇部に来ました。
中矢
嬉しいなー。
秀平
私はお兄ちゃんが演劇をやっていたので、小さい時から見に行っていて、やりたいなって思ったのと、将来の夢的に演劇をしていた方がいいかなって思って。
東尾
将来の夢とは?
秀平
声優さんです。
東尾
放送部と迷わなかったの?
秀平
演技力が付くので放送部より演劇部の方がいいよって、お兄ちゃんからのアドバイスがあって。
東尾
なるほど!お兄さんナイスですね。
井上
僕は、お母さんが演劇をやってはって、
一同
へー!
中矢
知らんかった!
井上
でも演劇はあんまり見たことはなかったんですが、部活見学の時に楽しそうだなって思って。一回、別の部活に入っちゃったんですけれども、やっぱりこれや!これや!(力強く拳を振る)って思って。2年から入りました。
東尾
で、ハマっちゃったんですね。
井上
はい。
東尾
いいですねー。
私は部活見学の時にすごく楽しそうだなって思って入りました。
東尾
よっぽど楽しそうな部活なんですね。
―アハハハ―
最大の理由としては、
一同
最大の理由って(笑)!
はい。最大の理由としては中学までは本当に陰気な子供だったので、お母さんに「もうちょっと顔に表情を出すとか、もっと人と接するようにしなさい」って言われたので入りました。
杉本
私は部活見学の時、先輩方が体育館でちょっとしたパフォーマンスをやっていて、それを見て「格好いいなー」って。それで稽古を見ていたら「すごい楽しそう!!自分もあんな風にできたらいいな」って思って。お母さんには反対されちゃったんですけれども入りました。
東尾
なんで反対されちゃったの?
杉本
家から学校が遠くて、その加減もあって勉強と両立がちゃんとできるのかって、すごく心配されちゃって。
東尾
それを乗り越えてもやりたいぐらい、素敵なパフォーマンスやったんだ。
杉本
はい。
山下
なんか、うちらにおごって欲しいの?
― アハハハ―
東尾
どんなパフォーマンスをしたんでしょうね。
山下
格好いいと言われるようなこと、何もしてないですね。
大谷
殺陣はしたな。
山下
殺陣はした。
大西
俺も飛び回ったことしか覚えてない。
森行
俺は下品なことしかしてない。
― アハハハ―
中矢
僕も言っていいでしょうか。引退しました中矢です。
お姉ちゃんがこの高校の演劇部に入っていたので、公演を見ていて、すごいなって思っていて。で、お姉ちゃんが借りてきた舞台のDVDのパッケージの裏側を見た時、役者さんがすっごく楽しそうな顔をしていて「すごい! こんなに楽しそうな顔ができるんや。こういう顔ができたらいいな」って思って。それで、この学校は演劇がすごいということで、受験勉強して入りました。
東尾
演劇部目当てでこの学校に?
中矢
はい。そうです。
東尾
うわ~すごい。この学校は全国レベルですもんね。
森行
同じく引退しました森行です。小学生の頃、クラスのお楽しみ会で劇をするですが、いっつも前に出て「俺、面白いやろ!!」って見せたいなっていう欲があったんですよ。
東尾
小さい時から自己顕示欲が強かったんですね。
― アハハハハ―
森行
でも、中学の時にそれが全くできなくなって。前に出て俺が演技するのを見てもみんな面白くないやろな、ってだんだんネガティブに考えるようになり始めて。でも高校生になって部活何をやろうかなって思った時、あ、演劇部があるって。ここでまたみんなの前に出ようかなって思って入ったんです。今は、なんか鏡見るだけで逆に面白くなってきました。
中矢
分かる、分かる!分かる、それ!
― アハハハ―
森行
すごいネガティブからポジティブになってきました。演劇部に入って、まったく後悔はしていません。
東尾
いいですねー。
大西
引退はしていない大西です。僕も入ったきっかけは、なんとなくなんですよ。これは入ってから思ったことなんですが、僕、すごく人見知りが激しくて、人の前に立つとなんか頭の中とか心のプレッシャーとかで、マズイ奴になっちゃうんですよ。だけれども、演劇部に入ったら人並みぐらいにはなるかなって思って。
藤本
私、どっち言ったらえぇんやろう!!
―アハハハ―
藤本
1つ目が、別の部活に見学に行こうとしたら、演劇部の先輩に「見学どうぞ」って言われて見て「あ、私もこんな楽しいことがしたい」って即決しました。ちなみに誘ってくれたのは大谷先輩です。
東尾
2つ目は?
藤本
2つ目は、私、将来教える仕事をしたいんです。それと、何か自分の思いを伝えるっていう仕事をしたと思っているんですけれども、その両方ができる仕事ってなかなかなくって。じゃあ将来、教える仕事をするのにして、今、伝えることをしようと思って。それで演劇部に入りました。
― うわあ~!!!かっこいい!!!―
大谷
そんなん、初めて知った。
藤本
はい。初めて人前で言いました。
山下
茶道部に入ろうとして誘われたって側の話しか知らんかった。
東尾
ラスト決めていただきましょうか。
山下
はい。部長をやらせていただいています。
小学校の時に入っていたクラブで年に一度ミュージカルをやっていて、それで舞台に立つ面白さとか、人前で全く違う者になる楽しさに惹かれてしまったんです。それで中学に演劇部があったので3年間、演劇をやって、ハマりにハマってしまい、地元で、演劇部もあるしっていうのでこの高校を受験させてもらったんです。
それで演劇部に見学に来たら、まあ個性が豊かというか、豊かすぎるというか、濃いメンバーがいたんですけれど、メチャ楽しそうやなって思って。さっきからみんな言っていますけれども、先輩方がほんまに楽しそうなオーラというか顔をされていたので、あぁここに入ったら楽しんやろうなって思って、高校でも演劇をしようかなと思って入部して今にいたります。
東尾
みなさん色々、素敵な理由があったのですね。
萩さんは演劇部に入って、それまでの自分を払拭したいというのがあったと話されていたのですが、入って変わった、表情が豊かになったとかってあります?
まだ~、ないですね。
大谷
発展途中やな。
山下
でも全然、違いますね。もっとなんか…、
中矢
暗いオーラが消えたよな。
山下
しゃべるのにもっと時間がかかっていたし、声も全然出ていなかったんですけれども、
東尾
えー!今なんか笑ってしゃべってますよね。
山下
はい。4月から比べると全然違いますよ。
中矢
俺たち帰ってきてびっくりした感じ。明るくなったよな。オーラかな。
山下
全然違う。
東尾
いいですね。そういうの。他になにかありますか?3年の先輩から見て、この子はすごい変わったとか。
中矢
そうですね後輩で大分変ったといえば、大西君。入ってきた時は短髪でメガネかけて「あ、すごく暗い子が入ってきたな」っていう印象だったんですが、そのうちメガネ取って、髪を伸ばして、それを自分で鏡で見て「俺、カッコいいかな」って思っている。
大西
最後のところは、ねつ造!!それ、ねつ造!!
森行
変わりましたね、大西くん。
東尾
それを伺うと、劇的変化ですね!
大西
自分自身、大分と明るくなったとは思いますね。
山下
垢ぬけたっていう表現が一番。
一同
あー!!
東尾
内面的にも変わったって感じですかね。
大西
そうですね。
東尾
それは演劇をして? このクラブに入ったから?
大西
お芝居をしたのもありますし、濃い先輩らや同期と話したりとか、そういうのでだんだん変わっていったと…。何となく選んで入った部活なのですが。
東尾
何となく入ったのに、ひょんなことから。なんとなく入ったということで共通する大谷さんはどうですか?
大谷
はい!私は見た目は明るい方なので。
一同
そやなあ。
大谷
あ、でも昔2年の先輩らが私を見た時に一歩下がられて…。あの距離感って。
山下
簡単に言うと厳つかったんです。
―アハハ―
山下
眉毛ないのに髪の毛上げているし、笑い声はでかいし、声はでかいし、常に態度はでかいしって感じで、あ、こいつイカツいなって、多分、みんな思ったんですけれど、しゃべったら、こんなアホで(笑)。
大谷
やわらかくなったと最近、言われます。
東尾
いいじゃないですか。
中矢
しっかりしたよな1年前と比べて、今は。
東尾
大分、成長したんですね。
大谷
はい。今は大分、大人の女に近づいたと思います。
一同
―爆笑―
東尾
最後に、みなさんでこの学校のいいところ、この演劇部のいいところを教えてください。
中矢
人生を変える部活やな。
一同
おーーー!!
パチパチパチ(拍手)
山下
ここの演劇部で言うと、公演数の多さとか、それに伴ってすごい全員の精神面が、入部当初に比べるとタフになっていくんですよね。
東尾
うんうん。立つ回数が多いと経験値が違いますもんね。年に何公演するんですか?
秀平
去年はエゲツなかった。
山下
去年は、21公演ですね。
東尾
すっ…(息を呑む)。そんなにできるもんなんですか?
―アハハハ―
山下
1つの作品を3回上演したりとかもあるんですけれども、2週間で作ったものもありますし、小さい校内公演とかを含めると全部で21公演。自分たちもやりすぎだろって。がんばったよね。今の時点でうちらも10公演以上やっているので、
東尾
すごい…
山下
多分、先輩・後輩の距離が近いっていうのもあるんですよね。
東尾
すごく仲が好さそうですもんね。
―アハハハ―
山下
それも、私たちの上の先輩方が築いてきて下さったものなんですけれども。
東尾
活動雰囲気の伝統を受け継いでいるわけですね。1年生の3人どうですか?
大谷
おっと振られた!
杉本
えっと、先輩方みんなやさしくて
―アハハハ―
大西
おまえ原稿、読んでるんとちゃうやろなぁ
杉本
親身になって相談とか聞いてもらったりとか、部活以外でも勉強のこととか、いろいろ聞いてもらって、いい先輩方で。演技もすごく上手くて、私たちも先輩たちを見てあのようにできたらいいなって思っていて、
東尾
ズバリ憧れの先輩は誰ですか。
杉本
えっ!えっと、ツギエ(大谷)先輩…。なんかすごい面白いんですよ。
大谷
それは、たぶん意図しないところやな。
杉本
えっと、なんか見ていて笑えるし、
― アハハハ―
中矢
それは、笑顔になれるってことやな。
杉本
変わっているっていうか、他の人とは違うなって思って。いつも前で見たりして、次どんなことしてくれるんやろう、とか思って。面白いなって。
山下
(大谷さんに)大丈夫!褒められているから。
―アハハハ―
杉本
私もあんな風に笑わせたり、面白いなって思われたりしたいなって思っているんですけれども。難しくて。やっぱり難しいですね。
大谷
でもうち1年の時、全然面白くないって言われ続けていて、
山下
今も面白くないって。
―アハハハ―
東尾
萩さんどうですか?
あの…えっと、尊敬…いないですね。
―アハハハ―
森行
俺達のせいでもある。
尊敬というより…尊敬はいないですけれど、本当にみなさん楽しいです。
一同
爆笑
藤本
みなさん各自、良いところが違うので…。でも私からしたら山下先輩です。
一同
お~
山下
山下先輩っていわれるの、すごい新鮮やな。
藤本
ちょっと言いにくかったです。
山下
いつもユリアやからな。
東尾
楽しいクラブの雰囲気があって、入ってよかったですか?
藤本
はい!
―パチパチパチ(拍手)―
東尾
即答ですね。
山下
2年生全員からなんかあげんといかんな。
長瀬
鈴カステラやな。
東尾
本当にいいクラブですね。今しかできないことを、がんばってください!
一同
ありがとうございますー。
東尾
公演、一楽しみにしています。
ありがとうございましたー。

構成:佐藤和佳子