KUNIO08『椅子』ファイナル 杉原邦生さん インタビュー

不条理劇でフランスを代表する作家の一人、
ウージェーヌ・イヨネスコ。
彼の代表作でもある『椅子』を今、京都で勢いのある若手演出家杉原邦生さんが演出。2011年に東京、名古屋で上演し好評を博しました。

今回、山海塾ダンサーの岩下徹さんと女優の細見佳代さんのコンビによるKUNIO08『椅子』はファイナルを迎えます。

有終の美を飾るべく稽古に励む杉原邦生さんに演出にまつわる意外なエピソードと見どころを伺いました。

インタビュアー 佐藤和佳子

第一幕 点が線になって

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イヨネスコの『椅子』という作品は、 これは演劇をやっている方には、よく知られている作品なんですか?
杉原
そうですね。だいたい『授業』と『禿の女歌手』『椅子』っていう 三つが代表作って言われていて、まあ、もうちょっとあるんですけどね 、『犀』とかも有名かな。 その代表作のうちの一本だから、イヨネスコを知っていたら 『椅子』は絶対知っていると思います。 でも最近はあんまり上演されないんですよね。 僕も一度だけ、新国立劇場で香港のカンパニーがやったのを 見たことがあるんですけど、生で見たのはそれ一回。 それ以来チラシとかもほとんど見たことないから、 あんまり上演されてないと思います。
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あまり上演されない『椅子』という作品をなぜ上演しようと?
杉原
その僕が見た香港のカンパニーの『椅子』が面白くて、 なんとなくずっと気にはなっていたんです。 2004年だったかな?『ザ・ゲーム』(不条理で奇妙なゲーム : ウジェーヌ・イヨネスコの悲喜劇「椅子」より : 新国立劇場2003/2004シーズン)っていうタイトルになっていたんですけど。 老人と老婆の椅子取りゲームみたいなイメージで演出されていたので 『ゲーム』っていうタイトルだったんです。 一方で僕の卒業大学(京都造形芸術大学)の先生だった岩下徹さんは 僕の作品を何本も見てくれて、おもしろいって言ってくれていて…
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杉原さんが卒業してからの舞台を?
杉原
いえ、在学中から見てくれていたんです。 で、「いつか一緒に何かやらしてください」って雑談の中でポッて 言ったら「やりましょう!」って言ってくださって、 「じゃあ、是非お願いします!」みたいな流れになっていたんです。 女優の細見さんは僕が学生の頃、 造形大の大学院生に在籍していらっしゃったんですけど、 太田省吾先生の授業発表公演に出ている細見さんを見て、 おもしろい女優さんだな、と思っていたんですね。 そうしたら、太田省吾さんの新作公演 『聞こえる、あなた?-fuga#3』で細見さんが出演、 僕が演出助手をやりことになって交流ができて、 細見さんにも岩下さんとは別のタイミングで 「いつか一緒にやりたいです!」って。
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告白して。
杉原
そうそう(笑)細見さんといつか大学のカフェで話しているとき、 「何かやってみたいこととかありますか?細見さん」って聞いたら、 「あたし、イヨネスコの『椅子』っていう芝居がすごく好きで、 それを岩下さんと二人でやってみたい」って仰ったんですよ。 ちょうど僕も岩下さんと何かやりたいと思ってたし、 細見さんとも何かやりたいと思ってたし、 『椅子』も前から気になってたし、いいかもな…と。 そんなとき、アイホールの「take a chance project※」という 大きい企画をいただけて、そこで予算もある程度確保できたから、 「このタイミングでやろう!」と思ってやったのが2008年の初演。 だけど初演と今回のものでは演出が全然違うんですけどね。
※2002年より開始した関西を拠点とする パフォーミング・アーティストと共に新しい作品を製作する共同制作事業
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じゃあ、最初に『椅子』を見てから実際にやろうってなったのは 4年経ってからで。
杉原
はい。その間に、他のイヨネスコの芝居を何本か見たり、 戯曲全集を買って『椅子』を読んでいたりしていて。 そういういろいろなタイミングが合ったってことですかね。
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もともと気になっていたところに、気になる人達が集まって来たと。
杉原
点が線になった、繋がった、みたいな感じで初演をやれたんです。