第2話 気になる今回のコンサートの内容は?
- ―
- ところで鼓童の本拠地があるのは、
新潟県から船で2時間ほど行った、
佐渡島ですね。石塚さんが佐渡に住まわれたのは・・・ - 石塚
- 1999年なので――もう17年!
でも、佐渡のことをあまり知らなくて(笑)。
この間、ほとんど研修所と稽古場と自宅という感じですね。 - ―
- とても自然豊かなところですが、
島というところで創作することについて、いかがですか? - 石塚
- 特に鼓童の研修所がある地域は、山の中に入った、
ちょっと昔の日本人の生活風景が沢山あるんです。
僕たちがやっている芸能は、
そういう生活から出てきたものがほとんどなので、
修行時代、そういう風景を感じながら
芸能の勉強ができたのは、
表面的に譜面を追いかけるだけじゃなくて、
感覚的にも磨かれてよかったですね。
あと、僕は埼玉で育ったので、海が無かったんです。
でも毎朝起きると、目の前に海があって、「あ、海~!」って。
今でも海を見るとテンションがあがって、パワーが出てくるんです。 - ―
- 佐渡のどの辺りが好きですか?
- 石塚
- 通勤には、家からまっすぐ山道を行くコースと、
ちょっと遠回りして海沿いを行くコースがあるのですが、
そこがいいですね。 - 海に囲まれているのに、すぐ山がある。そういう景色を見ていると、
人間って、そんなに大きくないっていうか、 - ―
- 大自然のスケールと…
- 石塚
- そうですね、そういうのを
毎日、感じさせてくれるところがいいなって。
田んぼを見れば、地に足を付けて農作業をしながら、
ちゃんと暮らしている方がいて。
すごくパワーがあるんです。
都会にないパワーがあっていいですね。 - ―
- 佐渡は芸能が盛んな地域ですね。
地域の祭りだけでなく、
世阿弥が流されたこともあって能が盛んです。
やはり地域の芸能も参加されるのですか? - 石塚
- ええ。佐渡で有名な芸能としては鬼太鼓がありますし
能も教わったりします。
佐渡の人は生活の中に芸能が根付いているんですね。
鬼太鼓は集落ごとにあって、
毎年、一番上手い人が衣装を着てやるとか、
結構、しのぎを削っているんです。
そして村の先輩から代々伝わってきている芸能という
意識がきちんとある。 - そういう中にいると、僕たちって、そんなもの全くないのに、
お金をもらって芸事をやるっていうのを考えると
こういう人達にはかなわないなぁと感じることがあります。
その分、一生懸命やらなきゃあな、っていう部分もあります。
すごく刺激になりますね。 - 芸能は本当は親から子へ、
生活の中で受け継がれていくもので、
そういうものを目の当たりにして、
さらに参加させてもらえるというのは貴重なことですね。 - ―
- さて、鼓童は今年35周年ですが、
これからというのはお考えですか?
ご自身がこうなっていきたいとか。 - 石塚
- ここ数年間ずっと、ある意味「ここを目標にしよう」と考えるより、
今年はこれを取り入れて、そうしたら鼓童にどういう変化があるか、
みたいなことを積み重ねてここに来たので、
この先もこうやって一年一年、その時のことを面白がりながら、
気が付いたら、ここに来ていたというようになったらいいなあ。
と思っています。
それから、ずっと玉三郎さんに導いていただいてきたので、
その先を自分たちでも切り拓けるようになっていきたいですね。 - ―
- ありがとうございました。
鼓童のさらなる進化が春秋座で拝見できることを、
楽しみにしております。
お話しをしてくださったのは
石塚充
家族全員が太鼓の演奏家という環境で、幼い頃から太鼓に囲まれて育つ。1999年研修所入所、2002年よりメンバー。新人時代より主要演目に抜擢され、 舞台では主に太鼓を担当。2007年より演出も手がける。穏やかな語り口と観察眼、的確な指示でメンバーからの信頼も厚い。「焔の火」「Stride」な どを作曲。近年、経験者向けのワークショップを展開。2013年、2015年「アマテラス」の音楽監督、スサノオ役を務める。