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共同利用・共同研究拠点2020年度リサーチ支援型プロジェクト 公募研究Ⅲ
失われた犬牽の芸能犬ー始原演劇の復元に挑む―

本プロジェクトでは〝犬牽(いぬひき)〟が育成していた〝芸能犬〟の復元研究及びアップデートを目指す。

犬牽とは古来より時の権力者に仕えてきた日本伝統のドッグトレーナー集団をさし、その誕生は仁徳天皇の時代まで遡る。『養鷹記(ようようき)』や『鷹經辨疑論(たかきょうべんぎろん)』には仁徳天皇四六年に百済から来日したドッグトレーナーが黒駮の〝鷹犬(たかいぬ=鷹狩専門の使役犬)〟を連れてきたことが発祥であると記されており、伝来後しばらくは大陸由来のドッグトレーニングを猛禽類のトレーナーが行っていたと推測されるが徐々に〝犬飼〟と呼ばれる専門職業が設立され独自性の高い文化が育まれていった。

中でも【冥界】や【死】を司る〝犬神〟と鷹犬を含む全ての犬を重ね合わせることで彼らの権利を尊重する思想は世界的に見ても大変珍しく、根底には犬本来の生活=死肉を喰らう腐肉食性(スカベンジャー)や獲物に死を与える殺傷行為の肯定が存在している。

それはクライアントが徳川幕府となり名称が犬飼から犬牽に変更されても変わることなく、鷹犬たちは生涯理不尽な叱責に晒されることなく街中だろうと好きなだけ運動を行い人の側にいながらも野性的で自由な生活を送ることが叶っていた。

そんな犬牽の伝統も江戸時代の終わりと共に途絶えていたが、筆者(荻島大河)が2014年より寛政年間に活躍した犬牽・水野伝十郎(みずのでんじゅうろう)が残した鷹犬飼育指南書「鷹犬見立仕込様口傳(たかいぬみたてしこみのさまくでん)」を中心に復元研究+現代社会でも犬牽のトレーニングやライフスタイルが行えるようアップデートを施した犬牽流派〝山政(やままさ)流〟を立ち上げたことで再び息を吹き返している。

これまで山政流では鷹犬の研究を主に行ってきたが、今回は犬飼・犬牽が担当していた芸能犬についての復元研究及びアップデートを行う。

芸能犬は平安時代に〝鷹飼渡(猛禽類専門のトレーナーである〝鷹飼〟と犬飼が大臣家大饗にて鷹狩を再現=演じる芸能)〟の一部として始まったが、江戸時代には徳川家男子誕生の際に行われる赤坂山王御宮参りに同伴する〝御供犬〟に変化しながらも脈々と継承が続けられていた。

その内容は一貫し、鷹犬以上に自由な生活を行っている芸能犬にただ歩いてもらうことで犬本来の姿を体現=冥界や死を司る犬神を表現することで邪気祓いや自然界の流れ(元来鷹狩において鷹は【生】を意味し鷹犬は【死】を意味する)を提示していたのである。

それは演劇の最も根底的な姿である〝始原演劇〟=自然な姿の動物を観劇するという構図を残した世界的に見ても稀有な芸能として芸能犬が位置していることを浮かび上がらせるだろう。

本プロジェクトではそんな芸能犬の全貌を古文書研究(『蒼黄抄』、『(御)犬繋形』、『犬名所並牽道具之図』等)と実施復元を通して明らかにし、同時にブランクを抱える犬牽文化の再興を目指すためにもアップデートを施した作品を現代の観客に提供することを目指す。

研究代表者:荻島大河

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