4月16日(土)、春秋座で元劇団四季のトップ俳優、
柳瀬大輔さんと井料瑠美さんの
ミュージカルコンサート
が開かれます。
柳瀬さんは『美女と野獣』『ジーザス・クライスト=スーパースター』を
それぞれ500回以上も主演。
井料さんは、『美女と野獣』『コーラスライン』など
様々なヒロインを魅力的に演じ、歌と演技に定評ある人気俳優です。
四季時代のことからコンサートの意気込みまでをインタビューしました。
第1回 歌を武器にした俳優をめざす
第2回 ミュージカル俳優になる!
第3回 ガムシャラとプレッシャーと
第4回 憧れの井料瑠美さん
第3回 ガムシャラとプレッシャーと
― 研究所ではどんな感じだったんですか?
柳瀬
バレエからジャズダンス、日舞、呼吸と開口など
いろいろな事をやらせていただきました。
まだ早い時期のある日、浅利先生が
歌系の研究生全員の歌を聞くとおっしゃり、
本当は『オペラ座の怪人』のナンバーを歌いたかったんですが、
怪人は畏れ多いし、ラウル役(『オペラ座の怪人』)には
ソロナンバーがないので『キャッツ』のラム・タム・タガーという、
セクシーでちょい悪の猫の歌を歌ってみたんですね。
今考えると怖いんですが、遊び心で。
そうしたら
「うーん、お前には合わないな」
と想定内の評価をいただきまして。(笑)
「次はオペラ座の怪人のデュエットを歌え」
って言われて、うおぉーきたー!と思いましたよ。
その歌はもちろん前から自主練習していたので、
2回目の歌聞きの時に
「お前はラウルを勉強しておけ」
と。ほんと嬉しかったですね。
そして大作ミュージカルの準主役を研究所を出ていきなりでは
荷が重いな、ということになり、
先にファミリーミュージカルで台詞の勉強をするために
研究生の後半は『冒険者たち~ガンバとその仲間~』という作品に
入れていただきました。
「シジン」という、台詞が詩になる
不思議なキャラのネズミの役をやりながら、
主役のガンバも練習しとけと言われて。
初の劇団四季の作品で、ステージのど真ん中で僕が一人で踊るとか
あり得ないと畏れおののき…。
アクロバティックなダンスナンバーもあり、
もちろん台詞も多く歌もたくさんある、
それはもう「贅沢な役」で稽古中はまさに死に物狂いでした。
研究生なので早朝から掃除、レッスン、午後の本稽古の後、
夜はガンバの自主連という、どっちかというと文系だった僕の
体力気力の限界を試すような日々だったんです(笑)
それを半年間。ツアー後半の出雲公演で
一度だけガンバをやらせてもらいましたが、
プレッシャーからの解放感が忘れられません。
そして次の年の入団一年目に大阪の『オペラ座の怪人』にラウル役で
入れていただいたんです。
アンサンブルをやりながら先輩の石丸幹二さんのラウルを見て勉強し、
水曜日のマチネで一回ラウルをやるという生活を3カ月。
『オペラ座の怪人』に入れたのはとても嬉しかったんですが、
忙しさの波にど~っと流されて、
気がついたら「10年経った」みたいな感じでした。
― 劇団四季時代の思い出の作品って何ですか? ひとつ上げるとしたら
柳瀬
うーん。ひとつっていうと難しいんですけれども、
やっぱり『ジーザス・クライスト=スーパースター』でしょうか。
ジーザス役は入って4年目に振られたんですよ。28歳でした。
「柳瀬、ジーザスを勉強しておけ」
と言われて、
まさか自分がジーザス・クライストをやるなんて思っていなかったんで、
使徒のペテロ役かなと思い
「ジーザスの何役を勉強したらいいんですか」
と聞いたら、
「ジーザスだ!」
と言われました。
ええー!まさかジーザス!?「あ、脱ぐ?」って。
ジーザスは最後に腰布だけで十字架に掛かり、
時間にして10分ぐらい一人晒されているんですよ。
ほぼ全裸で見るものが他に何もない荒野の舞台に。
― (笑)
柳瀬
先ずあのイメージ画が頭に浮かんで、これはやばいぞって。
それから舞台のタイトルロールを任されるプレッシャーとか
色んなものがドドーッと押し寄せてきました。
早速スポーツクラブに入会して、
トレーナーさんにメニューを組んでもらって、
脱いでも恥ずかしくない細身の体を造りつつ、歌の自主練習。
ロック・オペラと作曲家は銘打ってるんですが、
普通ではない音域のすごい声を出すんですよ。
『オペラ座の怪人』に出演しながら、
空いている時間に『ジーザス』の勉強と自主稽古をして、
ジムに通う生活をして。
初演は『ジーザス』を全うすることに必死すぎて、
あまり周りのことが見えてませんでした。
とにかく無事にやり遂げることしか考えられなかったので、
逆に何とかなったんですね。きっと。
キャリアをかさねて客観的に見られるようになってくると、
プレッシャーを感じるようになるんですよ。
初演の時は「新人の柳瀬がジーザスできるの?」
みたいな感じで見られたと思うんですが、評価をいただく事で
前回よりも良くできなきゃいけないみたいなハードルが生まれました。
『ジーザス』は10年の間1人で500回以上やらせてもらいました。
他の役は大抵ダブルキャスト、トリプルキャストになるんですけれど
『ジーザス』はそうじゃなかったんですよ。
役の条件が厳しいのか、ハイトーンの裏声がうまく出なければいけないとか、
面長で長身じゃなければいけないとか…あくまで憶測ですが。
ジーザスの上演期間は毎回、
明日オリンピックの本番があるみたいな精神状態の中にいて、
日々『ジーザス』をやる為だけに生きているみたいなね。
充実感もこの上ないんですが…本当にきつかったですね。
― それだけ『ジーザス』を続ける苦労って相当なものなんですね。
柳瀬
そうですね…。春のシーズン、スギ花粉症のきつい時期って
薬を飲んでもやっぱり声が出にくいんですよ。
それでも『ジーザス』は容赦なくやってくる。
腰を痛めて運動できないけれど
「『ジーザス』あるぞ」
って言われると無理してもジムに通って体重を落としたり、
食事制限をしたり。
だから本当に28歳から30歳代は、
あ、あと『美女と野獣』のビーストという、何というかすごい外見の役…
― はい、
柳瀬
その役でいるだけで恐ろしく体力がいる作品があるんですけれども、
それと『ジーザス』を二本柱で500回ずつぐらいやっているので、
頭で考えるより先に体が悲鳴をあげてしまいましたね。
なので悔いはないんです。
役者としてとても幸せな事ですよね。
― (笑)すごいですね。
第4回 憧れの井料瑠美さん