ストーリー
かつて神童と呼ばれたスティーブン(畠中洋)は、音楽の壁に突き当たりピアノが弾けなくなりクラシック伴奏者への転向を考え、ウィーンのシラー教授のもとにやって来る。しかし彼に紹介されたのは、ピアノは下手くそで、声楽家としても峠を過ぎたマシュカン教授(加藤健一)。ピアニストであるスティーブンに、マシュカンは、シューマンの連作歌曲「詩人の恋」を全編歌いこなすことを課題とする。“ピアニストが何故、歌を?!”と強く反発するスティーブンだが、嫌々ながらも歌のレッスンを始める。マシュカンの反ユダヤとも思える発言や個性的な考えに全く理解をしめさないスティーブンだが、マシュカンの熱い音楽への愛に次第に自らの音楽の心をつかみ、互いに閉ざしていた心を開いていく。ある日、スティーブンはユダヤ人であることを告白し、第二次世界大戦中にユダヤ人強制収容所が多く存在したダッハウに向かう。しかし収容所の跡には、白く美しく塗られた建物とドイツ語で書かれた説明文があるだけ。「修復じゃない隠蔽だ」とスティーブンは怒りに震える。そしてその経験と怒りをマシュカンにぶつけた日、マシュカンの秘められていた過去があきらかになり…