演じる高校生に出演したかつての高校生を訪ねて

シリーズ 第2回 上田慎一郎さん編

(第2回大会出場。滋賀・長浜高等学校OB)

過去に出演した高校生に、高校演劇での思い出や演劇を通じて学んだことなどをインタビューしていくこの企画。
2回目は上田慎一郎さん。現在は映画の自主制作団体を立ち上げて監督・脚本をされている上田さん。そんな彼にとっての高校生での演劇経験をお話していただきました。

高校で演劇部に入ったきっかけって何でした?

中学生の頃に家に8ミリのカメラがあったので、それで友達と一緒に遊びで映画を作っていたんですね。友達の家にはハリウッドの映画のビデオとかたくさんあって。そのうちに、映画監督になりたいなって、思うようになったんです。
でも、映画部ってないじゃないですか?なのでそれに近い演劇部に入ったのがきっかけじゃないかな、と思います。

実は、高校1年生から演劇部ではなかったんです。
文化祭で毎年映画を作っていて、毎年学校から賞をもらっていたんです。そこに目をつけた演劇部の顧問の先生が、うちでやってみない?と誘われて演劇部で活動するようになったんです。

では、演劇部に入ったのは、だいぶ経ってから?

確か二年生の終わりぐらいだったんじゃないかと思います。

だいぶ遅かったんですね。

そうですね。他の部活だったらもう少し経ったら引退ですもんね。
演劇部に入ったら、顧問の先生からは「あとは任せた」と言われ(笑)、2本の作品を脚本・演出でしました。

演劇の脚本と演出をしてみてどうでした?

映画のシナリオを書いたりはしていたのですが、演劇では初めてだったので、作り方を詳しく分かっていなかったのですが、逆にそれがよかったんじゃないかなと思います。
でも1本目に作った作品は映画のシナリオの書き方とあまり違わない書き方をしたら、シーン割が多くなって、暗転が多くなっちゃいましたけど(笑)

でも、セオリー通りではないんだけども、ちゃんと作品として見れるものを持ってくるのが高校演劇の面白い所だったりしますよね。

そうですよね。僕らも演劇のセオリーはよく分かってなかったんですけど、『物語』の作り方はなんとなくわかっていたのがよかったのかな、と思います。

演劇部の仲間とはどうでした?

演劇部に入ったときには、すぐに3年生になったということもあって、普通は引退真際なんですよね。なので、サッカー部や野球部に入っていて、引退した友達に出演してもらったりしていました。その当時演劇部員が6人ぐらいで、それなのに出演者が20人以上の作品を書いたので(笑)、どうしても必要だったので、演技経験もほとんどなかったのですが、出てもらいました。

それで、近畿大会の優秀校に選ばれるんですから…すごいですね。

いえいえ、そんな…。演技とかも結構任せていたりしてたので。「ここはアドリブで」とか(笑)。みんなの自主性に任せていたのもよかったんじゃないかなと今は思います。
それとなにより演劇部は、いつも滋賀県の地区大会で負けてしまっていたんですね。なので、なんとしてもそれを突破したいと思っていました。全国大会に行きたいって。
ですので、発声練習も、いわゆる普通の発声練習をしないで、というか恥ずかしいので(笑)、「おれ達はうまい!」とか大声で言ったりして(笑)

それはそれで結構恥ずかしいような(笑)

ですよね(笑)。でも、なんというか…根拠のない自信があって、絶対全国大会にいける、と思い込んでいて、で、皆で声に出していっているうちに、他の皆も「もしかしたらいけるんじゃねぇか?」と思いはじめてきて、ちょっと洗脳というか自己暗示的な感じですけど(笑)それも良かったんじゃないかなと思っています。

練習はどのぐらいしていました?

ほぼ毎日していましたね。練習だけのために学校行っていた日もありました。
私、こんなこと言うのもなんですが、学校からしてみたら出来ない子でした。「不良」でした(笑)。暴力的な意味じゃないですよ(笑)授業をちゃんと出ないで、文化祭や体育祭のときは人一倍頑張るみたいな、そんな学生でした。

高校を卒業した後ですけれど、映画の制作の道に進まれたんですよね?映画を製作していく上で演劇をしていたことは役に立っていますか?

めちゃめちゃ役に立ってますね。映画や演劇だけに限らず、会社などでもエンターテイメント的な能力を発揮しなければならないとき、例えばプレゼンなど、そういうときってあると思うんですけど、演劇で経験したことが生きない分野はないと思ってます。演劇や映画だけに限らず、スポーツでも何でもそうだとは思いますが。

高校演劇を通じて、ものの見方や価値観など変わっていったことってありますか?

先ほども言いましたが、作品を創っているとき根拠のない自信があったんですね、「全国大会いけるぜ」って。それがなかったらそこまで作れなかったと思うんですね。
で、そんな自信を表に出していっても通用するんだ、っていうのが自分でも分かってきて、今も何をするときでも「やればできる」って。「できないのは、やっていないからだ」って思うようになりましたね。
それと、演劇を始める以前は、監督・脚本・主演全部自分という感じで映画を撮っていたんですね。演劇をやり始めて、友人に役者をお願いして演じてもらったら、すっごいうまい友人がいたんです。それをみたら、「あ、役者では絶対勝てない」と「脚本と演出に集中しよう」と思ったんですね。
高校生ぐらいの頃って、自分は何でもできるって思っちゃうじゃないですか。自分は何事に関しても他の人よりちょっと上みたいな(笑)。でもめっちゃ演技がうまい友人を見て、自分がやらなくていいことはやめようと、素直に思えるようになりましたね。不得意な分野を無理してやるよりも、得意な分野を伸ばす方がいいって考えるようになりました。

では、最後に、出場する高校生やここを目指して頑張っている子、ものづくりを志すみんなに応援のメッセージをお願いします。

夢中になるっていうことが一番大事なんじゃないかなと思います。夢中になれる何かを見つけるということ。夢中になるって実は結構難しいんじゃないかなと思います。大人になったらもっと難しくなってきますし、より高校生の頃の方が夢中になれますしね。夢中になるということが一番強いんだよ、って思いますね。利益とか結果とか求めず、夢中に打ち込んだらいいんじゃないかと思います。

本日はありがとうございました。

ありがとうございました。