この秋、全国21都市を巡る「松竹大歌舞伎」として
春秋座に猿翁一門の大歌舞伎がやってきます。
6、7月に行われた猿翁、猿之助、中車、團子の
襲名興行の合間を縫って、
「松竹大歌舞伎」にかける思いについて
お話いただきました。
第一幕 熊谷陣屋と女伊達
- 右近
- この度、公文協の西コースということで、
この9月に各地へ伺わせていただくことに相成りました。
演目は『熊谷陣屋』で熊谷次郎直実の大役を
勤めさせていただきます。
数々の名優の方々、
諸先輩が懸命に演じてこられた
この『熊谷陣屋』を
私ども猿翁一門の若手で
演じさせていただきますこと
それを各地へ巡業できますこと
大変嬉しく思っております。
©松竹
当初、西コースで私ども
猿翁一門で廻らせていただく
というお話は、ずいぶん前に
決まっていたのですが、
演目についてはどうなったのかな
と思いましたところ
『熊谷陣屋』と言っていただきまして。
ああ、熊谷をやらせていただけるんだと。
古典浄瑠璃といいますか、
本当に古典の代表作を私どもでやらせていただけるという
大変な喜びを感じております。
『熊谷陣屋』の熊谷次郎直実役は
1999年に私の自主公演の「市川右近の会」で
上演させていただきましたが
それは自主公演でございましたので、
わずか2日間で4回公演でした。
今回は各地に廻らせていただいて
たくさんの公演回数を勉強させていただきます。
この巡業の良いところというのは、
一カ月公演ですと、だいたい25日間なんですけれども、
10箇所ぐらいのところを廻らせていただき
中でも2回公演をやらせていただくということで、
多くの公演回数、多くその舞台を経験できるというところが
私どもにとりましても大変勉強になるところなので、
しっかりと勉強して、師匠の猿翁から習いまして
勤めてまいりたいと思っております。
- 笑也
- 藤の方と女伊達をやらせていただきます。
今回の6・7月襲名興行でもそうなんですが、
舞台稽古の時、猿翁が毎日のように来てくださいまして。
ボソボソボソッとダメ出しをしていただく中で、
「魂がない」と言われまして。
フッと我に返りましたところ、
そういえば、なぞっていたなと
数をやるごとに『ヤマトタケル』でも
なぞってしまうんですね、どうしても。
それで肝心な部分を忘れているな
ということに気が付きまして、
一からやり直しという感じで
6月は一生懸命演じるようにしてきました。
©松竹
その魂というところで、
義太夫物に魂を入れすぎると、
とかく私の場合は歌舞伎の色がないとか、
味がないとか言われるので、
そこの調和が非常に難しいわけでございます。
市川笑也の課題というのは、
歌舞伎らしく演じるというのが課題なものですから。
どこまで皆様に納得していただけるところまで
出来るかなというところです。
一生懸命頑張ります。
次回はお二人の師匠でもある猿翁丈のことについて語っていただきます。