本研究拠点は、舞台芸術研究センターが2001-2012年にかけて行ってきた研究活動を踏まえて設置された研究拠点であります。本研究センターは、2001-2008年度に「文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業 学術フロンティア」と、2009-2013年度にかけて、「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の助成を受け、独自の研究活動を展開してきました。
本研究拠点の独創性・独自性は、舞台芸術一般の学術研究において、舞台芸術作品の創造・受容の多様なプロセスを、「劇場を用いた研究」という手法を通じて実践的に探究していくことを目的とする点にあります。
「舞台芸術の創造・受容のための領域横断的・実践的研究拠」は、具体的には、本学研究者が中心となって行う「テーマ研究課題」と、学外の研究者に広く公募する「公募研究課題」(平成26年度より実施)に基づいた各研究プロジェクトが、本学の所有する本格的な劇場施設である「京都芸術劇場」(大劇場:春秋座、小劇場:studio21)を使用した「劇場実験」を核として、上記目的を達成し、広く公開していこうとするものです。
芸術系大学のコアは、何よりも芸術作品の「創造」にあります。しかも、国際的な競争が進行する現代日本の状況においては、未来の「創造」のための実験機能や研究機能の充実こそが急務であると言えます。
そこで、芸術系大学における「作品創造」の役割を〈ファクトリー機能〉、「創造のための研究や実験」の役割を〈ラボラトリー機能〉と名付けておきたいと思います。この二分法の内部では、本研究拠点における各研究プロジェクトは、もっぱら後者の機能を担い、日本における舞台芸術の創造と研究の有機的な結びつきを目指した新たな研究手法のパイオニアとなることを目的としています。
その際、本研究拠点の特色は、なんと言っても本格的な歌舞伎劇場である「春秋座」と、実験的多目的スペースである「studio21」とを《実験装置》として活用することにあります。こうした《実験装置》をもつ芸術系大学は、日本では差し当たり本拠点くらいであろうと考えます。言わば研究・教育システムである「大学というカルチュア」と、芸術創造・受容の《装置》である「劇場というカルチュア」とを、有機的に統合し活用していこうと言う、従来の日本にはなかった教育・研究・創造の実験であると申せましょう。
各研究プロジェクトは、研究者とアーティスト(芸術系大学に所属する者を含む)が共同で研究チームを組み、「劇場実験」をそれぞれの研究プロセスの中心に据えたプロジェクトを実施するものとします。