グレゴリオ聖歌&真言宗声明

インタビュー

暮れの春秋座で厳かに行われる
「グレゴリオ聖歌&真言宗声明」コンサート。
今回、初めて声明をお聴きになる方も多いのではないかと思います。
そこで、グレゴリオ聖歌と共にご出演いただく
九州真言宗青教連法親会 会長の堤大恵さんに
声明の歴史などコンサートを聴く前に知るとより面白くなる
お話をお伺いしました。

私たち真言宗青教連法親会は、弘法大師が唐から学び伝えた声明をさらに伝え、広げていこうと今までに人間国宝の梅若玄祥氏の新作能への出演、和太鼓の世界的エンターテイメンターであるTAOとの共演などを行ってきました。

声明は大きく真言声明と天台声明の2つがあり、真言声明は弘法大師が唐で学び日本に伝えました。最澄は声明を学んでこなかったので、天台宗で声明が始められたのは、それから40年後、慈覚大師が中国で学んできました。
声明は日本の音楽の源流といわれています。端唄、詩吟、浪曲など単旋律の楽は、声明からの流れなのですね。ですから能と声明も合うんです。
そして本来、声明は讃美歌みたいなもので、誰でも口ずさんでよかったのが、天草の乱が起きた時、幕府によりキリスト教禁教令が徹底され、キリシタンではないことを仏教寺院で証明させる「檀家制度」ができたんです。そこから仏教のイメージが変わり、声明そのものが変わってきてしまいました。葬式仏教などと言われますが、本来、仏教は葬式のためのものではなく、法話で大事で生きることの希望を与えるものなのですね。

古来から日本の音楽には陰旋(いんせん)と陽旋(ようせん)というものがありまして、陰旋は供養する音階、陽旋は生きている人物が明るくなるような音階なんですね。声明は「声」が「明るい」と書くでしょう。ですから陽旋。ですから声明を通じて、未来があって夢があるということをお伝えたいと思っています。
グレゴリオ聖歌と声明は一見、違うようだけれど似ています。例えば宗教の中の音楽という点でも似ている、同じなのではないかなと思います。声明を通じて、今を楽しく、明るく、そして夢を伝える、それが日本では声明なら他の国ではグレゴリオ聖歌なのかなと思います。
そして、讃美歌としてのグレゴリオ聖歌の「陽」の部分と、私たちの「陽」の音楽で「今を楽しもう、今を生きよう」ということを祈ることができたらいいなと思っています。