春秋座歌舞伎舞踊公演インタビュー+

5月8日(土)春秋座にて歌舞伎舞踊公演が行われます。
それに先立ち「京都芸術劇場ニュースレター」では
出演の市川笑三郎さん、段治郎さん、弘太郎さんに公演の見どころや
歌舞伎舞踊に対する思いについて様々なお話をうかがいました。
京都芸術劇場ニュースレター」で掲載しきれなかった
3人の楽しいお話を5回にわたり連載します。

第5回 歌舞伎授業の思い出

―春秋座がある京都造形芸術大学には以前、
猿之助先生の授業で教えに来ていただいていたのですが、
当時の思い出は何かありますか?
笑三郎
一番最初は、とにかくこういうことが始まるということで、
資料作りが大変でした。それとネタですよね。
もう何千本あるご自分の舞台の映像から、
これとこれの演目のこれを抜き取ってくれって言われて。
初めの頃は、もしかしたら、カバンに一杯持っていって、
それを掛け変えながら、必要な部分だけを流していたような気がしますね。
途中からメニューが決まってきたので、
抜粋して1本にして学校用のVTRを作りました。
とにかく師匠ご自身も初めての経験なので、
ある程度、海外でなさっていたゼミナールを元にしながら
授業内容を作っていたんですね。
―夏だったと伺いましたが。しかも冷房などなかったと。
みんな汗だくでやっていたと。
段治郎
階段教室の方はある程度冷房が効いていたんですけれども、
体育館での実技は、もうみんな浴衣が汗でベトベトになって。
―大変ですね。
笑三郎
大変でした。
―体育館は汗をかく場所ですからねえ。
学生さんは自分で浴衣を持ってきていたんですか?

本番直前。市川猿之助氏、直々の稽古
笑三郎
そうです。浴衣持参ですよね。
お扇子は学校で揃えて下さっていましたけれども。
段治郎
お扇子も年を重ねると学生さんたちの汗で、
カビが生えちゃうんですよ。
笑三郎
次に使うのは一年後になるわけでしょ。
今みたいに保管場所も良かったわけじゃないでしょうし。
段治郎
生徒さんを何人か選抜して
最後に発表会をやらせるんですけれど、
とにかく一週間しか時間がないので
我々もお手伝いに行かせていただいて、
立ち回りを教えたりとか。
でも僕は入ったばかりで、人に教えるなんて
とんでもないことだったんですけれども、
教えることで逆にこっちがすごく教わったっていう。
僕も造形大の授業で役者のイロハのイから
勉強させていただいたって思います。

最終日に行われる授業発表会
―一週間で舞台に立てるように教えるっていうのは、
教える側のテクニックも、すごいなぁと思うんですけれども。
段治郎
師匠はよく集中力っておっしゃったんです。
プロの役者というは、次の日が初日だったら、
徹夜してでも一日でセリフを覚える。
そういう集中力が大事だと。
でも、それは役者だけじゃなくて、
あらゆる、どんな世界でも共通することじゃないかなって。
それが集中力だと、それを勉強するのだと
おっしゃっていましたね。
だからこの講座で集中力を勉強させていただきましたね。

市川猿之助氏による千秋楽のあいさつ
笑三郎
初めのころ、必ず授業の千秋楽の師匠の挨拶は
「プロでもないこの子たちがこれだけできるんだから、
我々も明日からがんばらなくちゃあいけないっていう
思いをいただきました」
ということを必ず言われていて。それで
「な、我々もがんばらなくちゃあいけないな」って
言われるんですよね。
で、帰るとそれが僕らの稽古場での
ダメだしのキーワードになるんですよ。
「京都の学生でもあれだけできるのに、
あんたたちは何だ!」ってね。
それが、あのころ僕らの諌められる言葉になっていました。
それぐらい師匠も感動して京都から戻っていましたね
―本日は、ありがとうございました。
春秋座での公演、楽しみにしております。
(ここに掲載した以外のお話は「京都芸術劇場ニュースレター」でも掲載しています。こちらもご覧ください

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