原作 山口 瞳<エッセイ・ミュージカル>監修 山口正介 「江分利満氏の優雅な生活」 ―昭和の日本人― 山口瞳さん行きつけの 祇園の老舗バーへ ジェームス小野田さんが訪ねました 山口瞳さんのエッセイをミュージカル化した 「江分利満氏の優雅な生活」を上演する ジェームス小野田さん。 残念ながら、山口瞳さんにお会いしたことはないそうです。 山口瞳さん行きつけの祇園の老舗バー・サンボアの 女将さんに当時の話を伺いにでかけました。

ジェームス小野田

1982年に結成された米米CLUBのメンバー。中でも異才を放つ特異な存在として人気を博す。グループは人気絶頂の中、1997年に解散するも、2006年4月に再結成を果たす。音楽活動を続ける傍ら、近年ではミュージカル『ガブリエル・シャネル』『紫式部ものがたり』『江分利満氏の優雅な生活』で俳優としても活躍。また、独特な声や風貌を生かして、CMのナレーションや朗読、近年では「おのちゃん一座」を旗揚げし各地でワークショップと朗読劇(オリジナル・絵本等)上演でも活動中。

第二話 昭和の話

小野田
山口瞳さんは神奈川県の川崎に 住まわれたことがあったそうですね。 サントリーの社宅に近いところでいらっしゃったと。 私、出身が川崎なんですよ。 ですからすごくね、エッセイを読んでいて 土地感があるんです。
女将
あぁ~そうどすかあ!
小野田
土地が悪いとイチヂクがなるとかね、 そういう話に、すごく親近感がありまして。
女将
そうどすねえ。
小野田
息子さんも、かなり大きくなられましたね。
女将
正介さんね。いつまでも正介さんと言うてたら、あきまへんな。
小野田
小さい頃からお知り合いですとね…、なりますよね。
女将
今度も正介さんと何か一緒にお()りやすの?
小野田
はい。春秋座で本番前に プレトークに出演していただくんですよ。
女将
お二人でしゃべらはるのどすか?
小野田
いえ。演出家の竹邑類さんと 山口正介さんがお話なさるんです。
女将
そうどすか。
小野田
竹邑さんは友竹さんの時から演出をされているので、 初演からだと何年になるのかな。 14、5年前からになるのですかね。
女将
前の舞台は京都では、してはらへんのどすね。
小野田
ええ。銀座が初演で。友竹さんがお亡くなりになって できなくなっちゃって。でも、すごくいい作品なのでね、 プロデューサーから「ぜひ、やらないか」って言われて。 私、大所帯の米米CLUBという バンドのメンバーだったのですが、 それが一時休止になったものですから、 一人で舞台やミュージカルにチャレンジしたいな、 と思っていたところに、そういう話が来まして。
女将
そやけど、お一人は大変どっしゃろ?
小野田
大変です。私の初演の時はピアノはなかったんですが、 本当はピアノ一本でやるんです。 今度の舞台では友竹さんがおやりになった 初演に近い感じでやります。 ですから、今からドキドキなんです。
女将
どんな感じにしはんのかなと思って。
小野田
これから稽古なんですが、厚い本1冊分ぐらい 覚えなくてはいけないですからね。
女将
それは2時間(ちこ)うかかるのやったら、 そうどすやろねえ。
小野田
ええ。それで歌が10曲ぐらいありますから。 再演ですけれど、ちょっと変えてやるんです。 どういう舞台になるでしょうか(笑)。 ちょうど私の初演の時40歳だったんですが あれから12年目でして。
女将
山口先生の奥さんがお元気なうちに、おやりになったら 喜ばはったやろと思うと…。 今年、お亡くなりにならはってねぇ。
小野田
えぇ。そうでしたね。 奥様とは、12年前にやった時、お会いできたんです。
女将
そうどしたか。
小野田
山口瞳さんの集う会にも参加させていただいて、 ご挨拶させていただきました。 私は昭和34年生まれで、山口瞳さんが元年ですよね。 私は昭和の真ん中あたりに生まれたのですが、 山口さんは、すごく昭和を逞しく生きて来られた方だなぁ と思いますね。 でも、思うと昭和はすごくいい時代だなと思います。 今、リバイバルで昭和のそういうのが 流行ってきているじゃないですか。 この舞台は戦前~戦後の昭和の話なのですが、 あの時代は大変な時代だったけれど、 この作品を見て、日本人が逞しく生きてきた時代を 感じてくださったらいいなと思いうんです。
女将
そうどすねえ。
小野田
女将さんにとって、昭和はどうでしたか?
女将
一生懸命、働いていました。ハハハ。
小野田
そうですよね。高度経済成長期ですもんね。 こちらが質問するのも変なんですけれど(笑)。
女将
いやいや。 ですけれど、この頃はあまり飲まないお方が増えましたねえ。 飲み方が上手にならはったんか、
小野田
あまり無理して飲まない。
女将
美味しいさかい、なんぼでも飲むんやなしに、 明日(あした)の事が頭に入っている感じの 飲み方が多いどすな。 昔なら「明日は明日や。その時楽しかったらえぇやないか」 って、感じどしたけれどね。
小野田
そうですね。明日は明日の風が吹くってね。