復曲能「菅丞相(かんしょうじょう)」上演

みどころ

『菅丞相』の能としての特色は、なんといっても「人間道真」が描かれていることで、その点が、「雷」と化した道真が法性坊に調伏される現行の類曲『雷電』との違いです。その「人間道真」は、前場の叡山の法性坊での場面、後場の白川河畔での法性坊との対峙の場面など一曲に貫流しています。そのうち、とりわけ能ならではの場面といえば、前場では菅丞相が石榴を妻戸に吐きかける場面、後場では、登場直後の橋掛りに立つ菅丞相の亡霊の「荘厳なる凄み」、菅丞相に従う火雷神のハタラキ、師の説得で牛車を禁裡まで先導する終曲部などでしょうか。前場の道真の装束は、悲嘆のあまり一夜にして白髪になったという詞章をふまえて考案されたもので、頭(かしら)は子方用の白頭(しろがしら)です。

出演

前シテ 菅丞相の霊(童子)  大槻文藏 後シテ 菅丞相の怨霊 大槻文藏 ツレ 火雷神 大槻裕一 ワキ 法性坊 福王茂十郎 ワキツレ 従僧 福王和幸 ワキツレ 従僧 喜多雅人 間 能力 茂山茂 笛 杉市和 小鼓 吉阪一郎 大鼓 河村大 太鼓 前川光長 後見 赤松禎友 〃  武富康之 地謡 上野朝義 〃  上野雄三 〃  山本博通 〃  浦田保親 〃  寺澤幸祐 〃  林宗一郎 〃  齊藤信輔 〃  浦田親良

*復曲初演データ 平成14年4月上演 会場:大阪天満宮本殿前特設舞台 節付・型付・演出・装束選定・出演(シテ方):大槻文藏 監修:天野文雄

プロフィール

シテ方 観世流 能楽師 1942年(昭和17年)9月25日生まれ 大阪在住 大槻秀夫の長男として誕生、祖父に大槻十三をもつ。 祖父十三、父秀夫および、観世寿夫、八世 観世銕之丞に師事。 1947年「鞍馬天狗」の稚児で初舞台。1984年より能楽堂主催の自主公演能を始める。 2000年芸術選奨文部大臣賞、2002年紫綬褒章、2013年旭日小綬章受章など。

1946年、東京都生まれ。専門は能楽研究。京都造形芸術大学舞台芸術研究センター所長。大阪大学名誉教授。早稲田大学第一法学部卒業後、国学院大学大学院文学研究科修了。『翁猿楽研究』で第18回観世寿夫記念法政大学能楽賞、『世阿弥がいた場所』で第40回日本演劇学会河竹賞を受賞。ほかに『能に憑かれた権力者』『現代能楽講義』『能苑逍遥』(上・中・下)、『能を読む』全4巻(共編著)などがある。平成元年以降、大槻文藏や福王茂十郎氏の復曲活動に研究者として数多く参画している。