春秋座歌舞伎舞踊公演 市川笑也さんインタビュー 前編
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すっかり暑くなったね!みんな元気にしてるかな?
最近は鴨川で涼むのがだいすき、このすけだよ!
先月の「春秋座歌舞伎舞踊公演」で澤瀉屋を代表する女形、市川笑也1さんとおはなしすることができたんだ!
先代の芸術監督、市川猿翁さんとの昔話から芸談までいろ〜んなことを教えてもらったよ♪2回にわたるインタビューの前編は、春秋座の秘密や澤瀉屋に入るまでのエピソードをお届けするね!
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このすけ:はじめまして!ぼく、このすけです♡♡
笑也:笑也でございます。このすけくん、よろしくね。
このすけ:笑也さん、春秋座には昨年9月の『松竹大歌舞伎』に続いての出演ですね!春秋座は笑也さんの師匠、猿翁さんがこだわってつくった劇場だけど、「ここはすごい!」って思うところはありますか?
笑也:師匠のこだわりのひとつは照明ですね。舞台を華やかに見せる為に、光量が多くなるよう設計しています。でも、私たち俳優はとても熱くて……。
「松竹大歌舞伎」で『義経千本桜』の静御前をやらせていただいた時は、照明でかつらの中の銅板が熱くなり熱中症になってしまったんです。
このすけ:え〜〜舞台上で熱中症に!?ぼく、全然気がつかなかった!
笑也:夜の部でしたね。最後の台詞を喋っている途中で言葉がふっとなくなって……ご一緒した 高砂屋の旦那2に台詞をつけていただきました。(笑)
このすけ:梅玉さんもサッと助け舟を出せるなんてすごいなぁ!!
生の舞台では何が起こるか分からないんだね!
ねぇねぇ、笑也さんはどんな風にして猿翁さんの一門に入ったの?
笑也:きっかけですか……実は青田買いなんですよ。
私は国立劇場の歌舞伎俳優研修所の5期生なんです。研修生になって1ヶ月が経った頃、先輩の猿十郎、猿五郎を通して「卒業したら澤瀉屋に来ない?」というおはなしを頂いたんです。
このすけ:へぇー!でも笑也さんは子どもの頃から歌舞伎俳優になりたかったの?
笑也:いえいえ、そんなことは思いません。
私は人前に出るのがとても苦手だったんです。長く遡りますが、きっかけは保育園の時。『三匹の子豚』の人形をつくる授業で、おじいさんを振り分けられました。しかし、私は狼をつくりたいものだから、おじいさんをつくっているのにどんどん鼻が長くなってしまう。そうして先生に怒られたのがショックだったんでしょうね、その時から吃音症になるんです。
このすけ:そんなぁ……!!ぼくもおじいさんより狼がつくりたい!
笑也:小学校や中学校にあがっても人前で発表するのが苦手で、あまり人とは関わりたくないというタイプだったんです。
大学は、関西で友禅染をやろうと思って美大を受けたのですが、アイスホッケー部に熱中していたおかげで見事に滑りまして。アイスホッケーだけに!(笑)
このすけ:うまいっ!(笑)
笑也:その頃、東京に出た折に「国立劇場 歌舞伎俳優研修所」の募集を見て、間近で着物が見られるし、研修所に行きながら大学を受け直そうという甘い考えで入りました。すると、予習復習しないと次に進めないものすごくハードな授業でね。あららっという間に2年間が過ぎまして、師匠のお誘いもございましたので入門、という経緯なんです。
このすけ:ハードな2年をすごしているのに、はじめは歌舞伎俳優になりたかったわけではないんだ!?
笑也:そう。だから、澤瀉屋に誘われた時も「猿之助ってだれ?」って同期の研修生に聞いたくらいなんですよ。
このすけ:えー?!意外だなぁ!そんな入門からこれまで続けてこられて、猿翁さんに教わったことでいちばん心に残ってることはなぁに?
笑也:“集中力”を学ばなければいけない、ということですね。
“人間は普通、遊んでいる時に「勉強しなくちゃいけないな」と思いながら遊び、勉強している時に「遊びたいな」と思って勉強する。集中力をつける為に、その中途半端はやめなさい”と教えられました。つまり、遊ぶ時はひたすら遊び、勉強する時は全てを忘れて勉強するということです。
でもね、人間は集中しても5分しかもたない。ですから、俳優はその集中を舞台のどこで使うかが大切なんです。
このすけ:なるほど、集中力をコントロールしているんだね!ぼくもがんばってみる。今日の舞台、『双面水照月』では可憐なお組ちゃんを演じてたよね!“集中力”はどこで使ったの?
笑也:海老反り3ですね!やはり、難しい動きをする時に一番集中します。床も滑りますし、音にもはめなければならないので考えながら踊りました。
このすけ:笑也さんの海老反りはとっても綺麗で、お客さんも盛り上がったよね!さて、次回は女形を演じるに当たっての芸談を聞いたよ♪笑也版『藤十郎の恋』とは!?お楽しみに〜
- 1 二代目市川笑也(いちかわ・えみや)…1959年生まれ。青森県八戸市出身。国立劇場歌舞伎俳優養成所を終了後、三代目市川猿之助の門下となる。
- 2 四代目中村梅玉(なかむら・ばいぎょく)…1946年生まれ。高砂屋。2002年4・5月歌舞伎座「金閣寺」の此下東吉と「伊勢音頭」の福岡貢で四代目中村梅玉を襲名。
- 3 海老反り…片手や両手をかざし、海老のように反る姿勢。相手の威力に圧倒される様などを様式的に表現する演技。『双面水照月』では、猿之助演じる亡霊の念力で笑也演じるお組が操られる場面で見せた。