春秋座歌舞伎舞踊公演 市川笑也さんインタビュー 後編
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このすけだよ☆
9月1日の『伝統芸能の今2015』はもうすぐだね!るんるん♪
今日は、前回に続いて市川笑也さんインタビューの後編☆
女形ならではの芸談に迫っていくよ!
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このすけ:ねえ、先代と現在の芸術監督、笑也さんから見て似ている所やここは違うな、と思う所はある?
笑也:芸風は似ています。DNAでしょうか、声もそっくりですね。
久々に「ヤマトタケル1」をやった時、猿之助さんの台詞を聞いて「え?猿翁師匠?」と思ったほど!
一方で、作品の作り方は違いますね。猿翁師匠はビジュアル的に作品をおつくりになる。若い頃は映画監督になりたかったということもあり、視覚的に「ここが堅いな」と思うと、カットしたり、動きを変えたりなさるんです。一方で、四代目は物語を大切にした作り方をなさいますね。
このすけ:ぼく四代目の猿之助さんのスーパー歌舞伎Ⅱ『空ヲ刻ム者2』を観たんだ。笑也さんは、女盗賊の双葉さんをされていて、『義経千本桜』の静御前との雰囲気の違いにびっくりしちゃった!どちらも同じ笑也さんなのに……。女の人を演じ分けるのは難しいのかな?
笑也:秘訣はね、その人が持つリズムを出すことだよ。例えば高貴な方を演じるときはワルツだけど、下町の娘になるとビートが早くなる。それぞれの生活のサイクルを見せるの。
このすけ:リズムなんだね!女形を演じるようになってから、変わったことはある?
笑也:「かわいい!」が分かるようになりました。女の子は箸置きや猫を見て「あ!かわいい!」って言うでしょう?それが分からなくて、「小さいだけじゃないか」と思っていました。笑
でも、最近は子どもや動物を見ると「かわいい♡」と思います。
このすけ:ぼくも女の人にはたくさん「かわいい」って言ってもらえるんだ♡
もしかして、笑也さんは“おんなごころ”も分かっちゃうの!?
笑也:分かる訳ないでしょ!
女性はすごく喜んでいながら、煮えたぎる思いを持っていたりする…色で例えると灰色だよね。そんな女性を演じるのは一番難しいけれど、その分楽しいね!
このすけ:“おんなごころ”って複雑なんだね……『藤十郎の恋3』みたいに、実際に女の人を間近で観察することはある?
笑也:それがね、あるんですよ。
スーパー歌舞伎『オグリ4』で、龍子という非常に色っぽい女の役をする際、猿翁師匠に「あなたに色気はないけどね」と言われたのを機に、銀座のクラブでリサーチをさせてもらいました。ナンバーワンと呼ばれるホステスさんは、何故色っぽいのかと。
そうしたら、このすけくん……ものすごいことが分かったんですよ。
このすけ:(…ゴクン)どんなこと?
笑也:そこのマニュアルにね「男は赤ちゃんだと思え」と書いてあるんです。触れられていると安心すると。
例えば、両側にお客様がいるとするでしょう?右手のお客様の水割りがなくなったという時は、左手の男性の膝に自分の膝をふっと当てて「あ、すみません」と言いながら水割りをつくる。
そして、左手のお客様とおはなしをする時には、右手のお客様のひざに手を置くんです。
このすけ:す、すごいワザだね……!笑也さんはそれを歌舞伎ではどう活かしているの?
笑也:つまりは距離感です。例えば、道でカップルが歩いていて、間に隙間があるとまだ付き合いはじめだと分かるでしょう?
歌舞伎で女性を演じる場合も、男を知らない女性の時は男性の目ではなく胸元をちらちらっと見るんです。胸に飛び込むときも、恥ずかしいから隙間が空く。逆に、腰から寄っていくと色っぽい女性に見えるんです。
このすけ:ぼくにもできるかなぁー!!
今日は沢山おはなしを聞かせてくれてありがとうございました♡
笑也さん!ぼく勉強のために、最近は落語も聞きに行ってるんだ♪お勧めの噺家さんはいる?
笑也:お!古典は桂歌丸師匠。新作でしたら立川志の輔師匠がお勧めですよ。志の輔さんの『親の顔がみたい』という新作落語は大爆笑!
以前、飛行機の機内で『親の顔が見たい』を聞ける時期があったんですよ。ヘッドフォンで聞いてるのに声を出して笑っちゃってね。ちょうどキャビンアテンダントさんと目があったから一緒に笑ったよ♪『踊るファックス』と『みどりの窓口』もいいよ!歌丸師匠は『真景累ヶ淵(しんけいかさねがぶち)』ですね。
このすけ:わぁ!聞いてみなきゃ!!笑也さんも落語をお芝居の参考にすることはあるの?
笑也:それはもう!演じる時には雰囲気も持ってないといけないからね。例えば、以前『 権三と助十5』の長屋のおかみさんを演じた時にも、聞いてイメージの参考にしたんですよ!
このすけ:すごいなぁ!色んなことがお芝居のヒントになるんだね♪
とっても優しくて面白くて……ぼく、笑也さんのこともっともっとだいすきになっちゃった♡また春秋座に来てくれるの、楽しみに待ってるね!!
(…その後)
このすけ:ぁ!もうそろそろ京都でもあつ〜い夏がはじまるけど、笑也さんは夏の京都ですきな所はある?
笑也:川床は夏の京都って感じがしていいですね。南座から「床いいよな〜〜」って思いながら見ています。お料理も、京都は出汁の味付けで塩辛くないのが良い、京都の日本食はどこに行っても美味しいよね!
このすけ:床か〜!ぼくもいつか床に行ってみたいな☆
- 1 ヤマトタケル…1986年初演。三代目市川猿之助によるスーパー歌舞伎の第一作。2012年に四代目猿之助が襲名披露にて再演を果たす。
- 2 空ヲ刻ム者…2014年初演。スーパー歌舞伎Ⅱとして創られた、四代目市川猿之助と脚本家 前川知大による新作。笑也は物語の軸となる姉御肌の女盗賊「双葉」を演じた。
- 3 藤十郎の恋…歌舞伎の演目。名優で女形の坂田藤十郎が、自らの芸のためにファンのお梶に偽りの恋を仕掛けるという筋。
- 4 オグリ…1991年初演。三代目市川猿之助と梅原猛によって創作された。小栗判官の物語を題材にした現代風歌舞伎。
- 5 権三と助十…江戸の長屋を舞台にした歌舞伎の演目。1925年初演の岡本綺堂による新歌舞伎。