演じる高校生 対談
第2回
- 梅野
- 『演じる高校生』に出た時の脚本は、学校物なの?
- 眞栄田
- あれは、大人になれない27歳という話でしたね。
- 前川
- え、そうか?
- 眞栄田
- え!! オムニバスだったことしか思い出されへんけど…。
- 前川
- そう、4編。『シロツメクサ』っていうタイトルで
4つ葉のクロ―バ―のように、4つの話が絡み合いながら、
小さい幸せだとか、それはどうなの?ということとか、
本当にちょっとしたことなんですけれども。
そういうものを拾って、それぞれ何か関係があるのかなっていう。
- ―難しそうなテーマですね。
- 前川
- 元部員の生徒が書いた脚本なんで、特に難しかったです。
まずは、この脚本を私たちでどうするかっていう解釈からですから。
梅野くんのところは書いた人が演出をするから
稽古の途中でここは、こう変えようってできるけれど、
まあそれも難しいだろうけれどね。
- 梅野
- 大体書く時にはね、決めているから。
- 前川
- 内容は、ふわーんとしてる、ちょっと夢のような、昨日の思い出のような、
ちょっと懐かしい感じもしいの、ふと思い出す感じもしいのっていう。
- 眞栄田
- 朝から話し合いしてね、長かったな。
- 前川
- これ、注目すべきは美術なんですけれど。梅野くんのところと全然違いますよね。
- 梅野
- へー。
- 前川
- え!見てないんですか~!
- 梅野
- 出た年が違うし。
- 前川
- えーでもぉ~。
- 梅野
- 僕らは、この年は地区大会までしか行けなくて、県大会へ初めて行った年で。
あの…すねてる時…。
- 眞栄田・前川
- ハハハ そっちか。
- 梅野
- すねまくって引退せずに…。
- 前川
- この美術は最初、一枚の壁なんですよ。
- 眞栄田
- それがテトリスみたいにね
- 前川
- 幕が開いたら、箱がポコポコっと動きだして、ガバッと広がって、
ウィーン、ガシャン! ウィーンウィーンガシャ! って
(箱がカクカク動くことを身ぶりで表現)。
俳優さんたちも置くし、中に入れるようになっていて、
外から見たら箱が勝手に動いているように見える。
- 眞栄田
- 箱から足が出ているんですよ。
- 梅野
- すっげー。
- 眞栄田
- 基本、顔は見えないように移動しているんで、
- 前川
- しゃべらないけれど箱係っていうのがいて、
音楽に合わせてウィーンガシャン、ウィーンガシャンって
- 梅野
- すごい!
- 前川
- 目に見えて動かすのは舞台に出ている役者4人だけで、
とにかく人手がいるので、後のスタッフ、手の空いている人をここに詰め込んで、ウィーンガシャンっだったんですよ。でも、これは面白いですよ。
絶対見てほしい。梅野くんたちは?
- 梅野
- 南北朝時代の話で、太平記が太平洋戦争になっちゃう話。
全体としては南北朝時代なんですけれど、南朝の吉野軍、負けかけている朝廷で、降伏するか、しないかっていうところ。それが天皇の人間宣言に繋がって、
最後は三島由紀夫が自決して、イラク戦争に行っておしまいって。
最後はそんなに筋立てとかなくて、割と短い場面なんですけれども。
主人公の女官が最後に自害するんですけれども、
その自害と三島由紀夫の自決がかかって、
構想的には三島由紀夫は市ヶ谷で自決したんで、
市ヶ谷からイラクへ飛んでいくよっていうシーンで終わるんですけれども。
- 前川
- 覚えてる、覚えてる。面白かったですよ。
- 梅野
- ありがとうございます。ちょっとね、あれは周りの…
なんか兵庫県の先生は仲良くしてくださっていたんで、
平気だったんですけれども、他府県の先生とかは
「兵庫県、こんなん出してよかったんですか」って
「大丈夫なんですか?」っていう声が結構あったって。
- 前川
- 思想的なね。
- 梅野
- そうそう。「思想的に大丈夫なの?」って。
近畿で2位、次点だったんですけれども、
全国に行くか行かないかっていう話題よりも、
「もし、これが全国に行ったらNHKで放送できるのやろうか」って
いうことが話題になったんですよ。
僕が3年生だったんで、どの道出られたとしても全国大会は
翌年の夏になるので、僕は出られなかったんですけれども。大変でした。
- ―この時点では大学に行くことは決まっていた?
- 梅野
- 僕が『演じる高校生』に出た時は3年生でだったので、
造形大に行くことは決まっていたんです。なので、受験もしなくていいし
演劇部に一人だけ3年生で残りますっていって、それでやれたんですけれども。
- 眞栄田
- 僕は2年生の時だったので、決まってなかったんですが、
梅野君とは入試であってね。「お久しぶりです」ってね。
- 梅野
- そうですね。入るんだったらね、造形大は面白そうだったし。
- 眞栄田
- うん。
- 梅野
- 僕らが入ってすぐに観世栄夫先生、太田省吾先生がお亡くなりになってしまいましたけれど、お二人の授業は受けてみたかったですね。
- 用語説明
オムニバス…短い数編の独立した作品(主に短編)を、ひとつにまとめて一作品としたもの
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