歌劇「椿姫」全3幕(原語上演・字幕付)

イントロダクション

椿姫は普遍的なロマンです

名作と呼ばれるオペラの中でも、ストーリーが明解で、曲が親しみやすいとなるとかなり限られてきます。モーツァルトのオペラなどは、曲は素晴らしいけれど、概してストーリーが複雑で一口には説明できない。その点、「椿姫」は両方をクリアしたオペラです。多くの人に愛されている理由はそこにあると思います。それに、ヒロインのヴィオレッタが余りにも可哀想なので、それぞれの観客がどんな美貌の持ち主かを連想したくなるのです。私は以前から、3幕のヴィオレッタはレオナルド・ダ・ヴィンチの素描(「岩窟の聖母」のための習作)に描かれたような女性に違いないと思っていました。時代も350年前の人だし、国籍もフランスではなくイタリアです。でも病床で恋人をひたすら待つヴィオレッタの姿がダブって見えるのです。今回のチラシにこの絵を使ったのはそのためです。時代を超え、国籍を超えて「椿姫」には普遍的なロマンがあります。3幕への前奏曲を聴いて、ダ・ヴィンチの素描を思い浮かべてくれる人がいたらこの選択は間違っていなかったことになるのですが。

舞台芸術研究センター 顧問プロデューサー 橘市郎