愛をこめて、貴方たちの敵より。 ゼロ・アワー -東京ローズ最後のテープ

イントロダクション

「東京ローズ」は存在したのか? ゼロ・アワーとは、太平洋戦争中に日本政府が英語で 連合国軍向けに発信していたプロパガンダ・ラジオ番組。 南太平洋で戦う米兵たちに届く 魅惑的かつ退廃をそそる 女性アナウンサーの声は、いつの間にか 東洋の魔女“東京ローズ”と呼ばれるようになる。 終戦後、米国ジャーナリスト達は、声の主を探し出そうと 廃墟の東京に殺到するが… 史実とフィクションが交錯する「声たち」をめぐる物語。

アメリカ、カナダでも注目の公演が日本・京都に凱旋!

波間に消えた声を求めて

70年前、前線の兵士たちを虜にしたその声は一体どんな声だったのか。 それは遥か太平洋を越えてやってきた正体不明の声だった。 リスナーたちはその声に「東京ローズ」と名づけ、マスメディアが声に「生身」を与え、大衆がもてはやし、やがて反逆者として断罪した。選ばれた1人の若い日系女性の人生は激変した。 それにしても、主を持たず宙をただよう声に、人々がそこまでして輪郭を与えたということはよほど捉まえてみたい魅力があったからに違いない。 声というものは、名付けられて歴史に残されるか、または霧散して消えるように見せかけて亡霊のように永遠に宙を漂流し続けるか、どちらかなのだ。後世に貼られたレッテルを剥がし、逆に彷徨う声には新しい息吹を与えて再生させることが出来るのは、過去と未来も、此岸と彼岸も交じり合う舞台という場所だけである。

やなぎみわ(作・演出・美術)

やなぎみわ プロフィール 

神戸市生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科終了。1990年代後半より、若い女性をモチーフに、CGや特殊メイクを駆使した写真作品を発表し、とりわけ、制服を身につけた案内嬢たちが商業施設空間に佇む「エレベーターガール」のシリーズで注目を集めた。2000年より、女性が空想する半世紀後の自分を写真で再現した「マイグランドマザーズ」シリーズ、少女と老婆が登場する物語を題材にした「フェアリーテイル」シリーズ等を手がけるほか、ドイツ・グッゲンハイム美術館、原美術館、大阪国立国際美術館などで国内外での個展多数。 2009年、第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表。 2010年より演劇公演を手がけるようになり、2011年、本格的に演劇プロジェクトを始動。大正期の日本を舞台に、新興芸術運動の揺籃を描いた「1923」三部作、明治後期のパノラマ館などを舞台にした「パノラマ」シリーズを、美術館と劇場双方で上演したことで話題を集めた。また、ヨコハマトリエンナーレ2014にて移動舞台車を発表。PARASOHIA:京都国際現代芸術祭2015を皮切りに、「日輪の翼」(原作:中上建次)を台湾製の移動舞台トレーラーで上演するなど、精力的に活動している。

本作品は2013年7月神奈川芸術劇場、同年8月あいちトリエンナーレで上演された後、2015年1月~2月にかけてアメリカ、カナダにて計10公演が上演され、ニューヨークタイムズに劇評も掲載されるなど現地での注目を浴びた。今回の凱旋公演は北米ツアーと同様の演出で、台詞は英語で日本語字幕付きでの上演となる。

北米ツアー

1.ジャパン・ソサエティ/New York (ニューヨーク州) 1月29~31日/3回公演 2.ケネディ・センター/Washington DC(首都ワシントン)  2月6~7日/2回公演 3.メリーランド州立タウソン大学 スティーブンス・ホール/Towson (メリーランド州) 2月13日/1回公演 4.JCCC日系文化会館 小林ホール/Toronto (カナダ・オンタリオ州) 2月21日/1回公演 5.レッドキャット/Los Angeles (カリフォルニア州) 2月26~28日/3回公演