「オペラってどうして最後に主人公が死ぬものが多いんですか? たまにはハッピーエンドのものが見たいです」 ある近しいスタッフにこう言われたのは、 昨年「椿姫」の公演が決まった直後でした。 春秋座オペラにプロデューサーとして携わる最後の作品くらい 楽しい喜歌劇にすべきだったと反省したものです。 顧問として春秋座オペラを続けるようにと声をかけていただいた時、 真っ先に浮かび上がったのが「セヴィリアの理髪師」でした。 有名な序曲に始まって耳慣れた曲が5曲以上あり、 個性的な登場人物は誰一人死にません。 しかも随所に笑える場面があるので、小学生でも楽しめます。 ロッシーニが2週間ほどで書き上げた傑作。 それを素晴らしい歌手の皆さんが歌い演じてくれます。 しかも今回は、初日がソプラノ・バージョン(川越塔子)、 2日目がメゾ・ソプラノ・バージョン(郷家暁子)という贅沢なもの。 これならお客様も例のスタッフも納得してくれることでしょう。
(春秋座 顧問プロデューサー 橘市郎)