ギリシャ悲劇はダンスや音楽、
怒りに涙、笑いが詰まった一大エンターテイメント!
1980年イギリスで初演された、10本のギリシャ悲劇をひとつの物語に再構成した長編戯曲『グリークス』。全三部構成で、上演すると10時間にも及ぶ超大作です。
昨年KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オイディプスREXXX』で初めてギリシャ悲劇に挑戦した演出家の杉原邦生が“いま、この時代に上演すること” をテーマに
KUNIOが取り組み続けている新翻訳戯曲で挑みます。稽古に入ったばかりの5月下旬。出演者の安藤玉恵さんと杉原邦生の対談を行いました。
二場 女性的な視点がポイント
三場 人間の愚かさ、醜さ、愛おしさがグッと詰まった話
第三幕 ピクニック気分で10時間
―― 『グリークス』の台本を読んでみて、いかがですか?
安藤 まだ最後まで台本をいただいていないので、分からないのですが
なにより10時間ということで、もうすごいやる気ですから!
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杉原 一昨年、春秋座でも上演した木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談―通し上演―』
(以下、『四谷怪談』)を観に来てくださいましたよね。安藤 そう、6時間ですもんね。
あれがね、全く6時間ではなかったんですよ。
でも、8時間の作品もされていましたよね。杉原 KUNIO09『エンジェルス・イン・アメリカ』(2009・2011年)ですね。
その他に木ノ下歌舞伎『三人吉三』(2014・2015年)が5時間くらい。
いわゆる長尺ものと呼ばれるものは今までに3本やっていて、今回で4本目ですね。―― 劇場で丸一日過ごすことって、なかなか無いことですよね。
朝11時に開演して、終わるのが夜の9時ですからね。安藤 『四谷怪談』を観た時に私がそうだったのですが、観る方は覚悟していきますからね。
私、もう、おにぎり3つぐらい持って、水筒も持って行きましたから。―― 今回も劇場では食事など、なにか用意をする予定をしております。
安藤 でも、そのぐらいだと、途中で立っても怒られない気がしてくるんですよね(笑)。
ほら、トイレとかもあるし。
それぐらい気楽な気持ちで観にいけると思いました。
あ、途中で、トイレはいきませんでしたよ(笑)。―― そう伺うと、かつて歌舞伎は1日上演して、
弁当幕といってお弁当を食べながら観ていいよ、という弁当幕があった。
あのような感じに近いですよね。杉原 ピクニックみたいな感じですね。
安藤さんのマネージャーさん スリッパを持っていくのもおすすめですよ!
安藤 ホテルでもらえるスリッパとか持っていくのもいいかもしれないですね。
ちょっと寝てもいいかってぐらいの気持ちでね。―― そうですよね。でも、『四谷怪談』の時は面白くて眠らなかったですね。
安藤 そうそう、そうですよね!
だからあの楽しみってなんだろうなと思いました。
他のところではない楽しみ方で。
観劇の新しいスタイルですね。―― そういう意味では贅沢な時間ですよね。1日楽しむことができるって。
安藤 一生に一度あるかないか。
―― 最後、一体感が生まれそうですね。
安藤 ほんと、ほんと!
杉原 最後、出演者に拍手をするだけでなく、
がんばった自分たち(観客)にも拍手! ってなりますよね。
客席と舞台との一体感は、こういう作品でしか得られない独特の祝祭感がありますね。
それが、僕が長尺ものの演劇が好きな大きな理由なのかも。
僕はお祭り好きが高じて演劇を初めているので、
そういう空間をつくれることが最大の喜びだったりします。
演劇ってそもそも祝祭ですから、
ギリシャ悲劇が生まれた2500年前から。
そういう意味では、演劇の原点に触れるような舞台になると思います。―― 最後に、劇場に来られるお客さんに向けて一言お願いします!
安藤 京都で舞台に立つのは初めてなので、
まず京都ということが楽しみなのと、
杉原さんと出会ったのが京都で、しかも造形大だったということの縁に感謝しています。
そして10時間の演劇を作る、観ることの果てしなさを共有できたらと思います。喫茶店とかで「あの10時間芝居観ましたよ!」って
話しかけてもらったら、すぐ友達になれる気がする(笑) - 杉原 僕は長時間の作品をつくるということに関しては
ベテランの域に達しているので(笑)
そこは信じていただいて、臆せず、挑戦してみてほしいです。
ほんとうに滅多にない機会ですし、
演劇というのはお客さんと役者とスタッフとみんなで一つの空間でつくり上げるものなので、
この10時間の『グリークス』という作品を一緒に楽しんで体感していただけたらなと思います。
公演情報

京都芸術劇場 春秋座
昨年『オイディプスREXXX』で初めてギリシャ悲劇に挑戦した杉原邦生が、10本のギリシャ悲劇をひとつの長大な物語に再構成した長編戯曲『グリークス』全三部連続上演に挑む!
春秋座では、木ノ下歌舞伎『勧進帳』(2016)、『東海道四谷怪談ー通し上演ー』(2017)、演じるシニア2018『レジェンド・オブ・LIVE Ⅱ』(2018)に続く杉原邦生演出作品の登場。
”いま、この時代に上演すること”をテーマにプロデュース公演カンパニーKUNIOが取り組み続けている新翻訳戯曲上演の最新作として、今回のために小澤英実が新たに翻訳を担当。上演時間10時間におよぶ大作をお見逃しなく!