ギリシャ悲劇はダンスや音楽、
怒りに涙、笑いが詰まった一大エンターテインメント!
1980年イギリスで初演された、10本のギリシャ悲劇をひとつの物語に再構成した長編戯曲『グリークス』。全三部構成で、上演すると10時間にも及ぶ超大作です。
昨年KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『オイディプスREXXX』で初めてギリシャ悲劇に挑戦した演出家の杉原邦生が“いま、この時代に上演すること” をテーマに
KUNIOが取り組み続けている新翻訳戯曲で挑みます。稽古に入ったばかりの5月下旬。出演者の安藤玉恵さんと杉原邦生の対談を行いました。
. 第二幕 ギリシャ悲劇は一大エンターテインメント
. 二場 女性的な視点がポイント
. 三場 人間の愚かさ、醜さ、愛おしさがグッと詰まった話 (10/11公開)
第三幕 ピクニック気分で10時間 (10/18公開)
二幕 ギリシャ悲劇は一大エンターテインメント!
杉原 実はまだ、現時点では美術も何も決まっていないんです。
ただ、描く世界が狭くならないようにしようとは思っています。
この作品をやろうと思った理由の一つに、
いまの時代に、あえて長くて大きな演劇をやりたいと思ったことがあるんです。
みんなとにかく短くて気軽に楽しめるものに飛びつくんですね。
その上、例えばYouTubeだってアップロードされている数分の映像を
最後までじっくり見る人ってあまりいないですよね。
安藤 そうそう。
杉原 何を楽しんでいるの? という感じがしてしまう。
みんな、どんどん我慢できなくなっているんだと思うんです。
ところが演劇って全く正反対のシステムで
一定の時間、その場所に居続けて共有してもらわないと成立しない芸術ですよね。
そこにきて、さらに正反対を押し進めたことをしたいというか、
物理的にも世界観的にも大きい作品をいま敢えて上演する。
世の中の人が楽しもうとしているものとは少し違った視点から、
演劇の力、エンターテインメントの力を提示したいんです。
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演劇ってこういうことができるんだぞ!
こういう面白さがあるんだぞ!
ということを表明したいなっていうのがあって。
それには『グリークス』は一番良い題材、作品のひとつだと思っているんです。―― 『グリークス』は、3部でできていますね。
杉原 第一部の「戦争」では、トロイア戦争が起きて、
トロイアが負けて、トロイア人が奴隷にされる。
戦争のあらましが説明され、その中で起こる人間ドラマが描かれていきます。
第二部の「殺人」は、そのトロイア戦争をきっかけに、
ある家族の中で殺人が起きるという、一番ドラマティックな部になります。
そして第三部は「神々」。
全三部の中で演出的に一番難しいなと思っているのが、この第三部です。『グリークス』はどの部も基本的には戦争と殺人の話なのですが、
神々の存在というのが全編を通して中心にあって、これがとても重要なんですね。
前の二部を受けて第三部では、神々と人間とがどうやってある種の和解というか、
了解を得ていくのか、という話になっていくのですが、
抽象的かつ観念的な「神々」という存在が物語の軸を握っていくので、
演出的には腕の見せ所で、やりがいのある部だなと思っています。安藤 それに第一部、第二部に出て来る人たちって
スピンオフができそうな個性的な人物ばかりですけれど、
第三部に関しては知らない人ばかりで(笑)。杉原 知らないですよね(笑)。
安藤 名前はなんとなく・・・という感じ。
でも、確かに物語の神髄はそこかもしれませんね。杉原 ギリシャ悲劇というと、どうしても重厚で難しくて、
かしこまって観なくてはいけない、というイメージがあると思うのですが、
そもそもギリシャ悲劇は演劇祭で賞を取るために競って何本も上演されたもの。
ということは当時、悲劇は市民の娯楽の中心としてあった。
そう考えてみるとギリシャ悲劇の中には歌や踊り、
つまり、音楽コンサートやダンス公演のようなエンターテインメント要素も全て入っている。
もちろん悲劇なので怒りや憎しみ、悲しみや涙があるけれど、
そこには当然、笑いの要素もある。 -
ー KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『オイディプスREXXX』 photo by Maiko Miyagawa -
昨年末に初めてギリシャ悲劇に挑戦した『オイディプスREXXX』
(2018年|KAAT神奈川芸術劇場プロデュース)
の時もそうでしたが、僕は、ギリシャ悲劇は
“一大エンターテインメント” だと思っています。
ですから、たくさん出てくるカタカナの名前は覚えづらいけど(笑)、
観に来ていただいたら必ず楽しんでいただけると思います。
公演情報

京都芸術劇場 春秋座
昨年『オイディプスREXXX』で初めてギリシャ悲劇に挑戦した杉原邦生が、10本のギリシャ悲劇をひとつの長大な物語に再構成した長編戯曲『グリークス』全三部連続上演に挑む!
春秋座では、木ノ下歌舞伎『勧進帳』(2016)、『東海道四谷怪談ー通し上演ー』(2017)、演じるシニア2018『レジェンド・オブ・LIVE Ⅱ』(2018)に続く杉原邦生演出作品の登場。
”いま、この時代に上演すること”をテーマにプロデュース公演カンパニーKUNIOが取り組み続けている新翻訳戯曲上演の最新作として、今回のために小澤英実が新たに翻訳を担当。上演時間10時間におよぶ大作をお見逃しなく!